表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/15

序章 その1



 今日も長い長い一日が始まる。

 行きたくないなぁ。

 つまらない授業を何時間も受けなければならない。

 友達がいれば、そりゃ少しは楽しいのかもしれないけれど、

 僕は友達がいません!

 成績が良ければ、そりゃ少しは楽しいのかもしれないけれど、

 僕は勉強できません!

 


 理由を挙げだしたらキリがないけど僕は学校が嫌いだ。

 僕からすれば、あんな刑務所みたいなところに進んでいく理由が分からない。

 

 はぁ‥‥‥

 嫌だ嫌だ


 もしも地球にどうしても隕石が落ちなければならないのなら、僕は両手をピンと挙げて僕の通う学校を落下地点に推薦する。



 もしもテロリストが日本に来なければいけないのなら、僕は声を大にして、僕の通う学校に来てもらうようにする。

 

 そうしたら学校に行かなくて済むではないか!



 それはともかく。あぁ。

 一日が始まる。



 冷たく厳しい現実は僕の妄想をバッタバッタと倒していく。今日も僕は学校に行かねばならないのだ。  

 

 今日の授業は何だっけ

 あれ?数学の宿題やったっけ?化学のプリント持ったか?

 体育あったっけ?

 

 今の学年になってもう何ヶ月もたつのに、僕は全く時間割が分からない。 

 

 今までの行事だってろくに参加せず過ごしてきた。

 自分が悪いんだ。何か変わらなくてはと思っていても変われない。できることならば優等生でいたいし、楽しい気持ちで学校に行きたい。でも僕にはできないのだ。


 「来世ではうまくやれるかなぁ。お金持ちの家に産まれないかなぁ」

 そう呟く。

 まぁ無理かと結論づけて自分の部屋を出て1階に降りる。



 着替えて、顔洗って、朝ご飯を食べて学校に行かなきゃ。毎日、毎日襲ってくるこの一連の朝の支度には面倒くさいという感情さえ湧いてこない。以前、このまま朝の支度を365日、死ぬまでやるとするなら合計でどれくらいの時間を費やすのだろうと気になり、紙とペンを取り出して計算してみたが、答えが出る前に紙が埋まり文字を書けなくなったのでやめておいた。

 

 それ以来、朝の支度というものは人生において避けられないものだと割り切って生活している。学校もそんな風に割り切れたらな。




 支度を終えて玄関の鏡の前にたった僕は自分の顔をまじまじと見る。

 疲れている。ひどい顔をしている。


 「イケメンだったらなぁ」

 また独り言を呟く。


 そんな独り言が聞こえてしまったのか母が早く学校に行けと急かしてくる。



 今日も元気に行ってきまーす。

 そんな僕の声が元気ではないのはいつものご愛嬌だ。











 重い重い足をなんとか動かして学校へ到着。

 教室の僕の席を見つけすぐに座りイヤホンを付けて読書開始だ。

 やっぱり本はいいなぁ。嫌なことを忘れられる。


 と思ったが、開始2ページ目で主人公が学校が楽しいとか言いやがったので読書終了。そっと本を閉じる。



 どいつもこいつも‥‥。斜め前の席では恋人同士らしいクラスメイト二人組がお互いの肩を寄せ合い会話している。実際にカップルなのかはどうでもいいし、知りたくないのだが、なんだか、惨めさがこみ上げてくる。


 カップルを見て悔しいと感じている自分が悔しい。そんな感情が僕にはまだあったのか。


 ふと時計を見ると長針は2を指している。まだ学校に来てから3分も経っていないじゃないか。


 今日も長いなぁ。


 


 その時、イヤホンをしていてもはっきり聞こえるような非常ベルが鳴り響いた。


 ジリジリジリジリジリジリ

 「学校に刃物を持った不審者が侵入しました」

 放送がそう言う。

 ていうか非常ベルってあったんだ。


 イヤホンを外し、あたりを見渡すと、クラスメイト皆が騒いでいる。

 「なにこれ訓練?」「ばか!訓練って言ってなかっただろ!本物だ!」「早く逃げよう!」「どこに!?」「死にたくないよぉぉ」「スマホ用意しろ犯人の写真撮ろうぜ」「てか俺らで捕まえる?」「ぎゃー」「きゃー」「きゃー」


 教室はパニックだ。

 僕を除いて。


 僕は席から立ち上がり、クラスメイトをかき分け、教室の外に出る。

 「この混乱に乗じて帰っちゃお」



 先ほどテロリストがなんたらと言った僕には思わぬ幸運だ。これならば先生に咎められる事も無い。命の危険を感じたんです!と熱弁を見せれば、後からバレて呼び出されても問題無いだろう。僕は生まれて初めて犯罪者に感謝して、心の中では熱心な宗教信者のやうにひざまずき祈りを捧げていた。アーメン。






 グサッ



 銀色のなにかを持った、全身黒ずくめのなにかが僕に向かって突進してきた。グサッという音は言うまでも無く、銀色のなにかが刺さった音である。


 僕は一瞬で理解する。


 えぇぇぇ

 血が止まらない。死ぬ。死ぬ。死にたくない。

 

 「きゃー」「刺された!」「人が、人がぁぁぁ」「大丈夫か!?」「不審者を取り押さえろぉぉ」「救急車を呼べぇぇ」




 意識が薄れていく中で、クラスメイトのパニックが加速していく様子が分かった。思わぬ形で注目の的となった僕の顔は今、ニヤけているかもしれない。だが、それを確認する暇も無い。体中の感覚が抜けていく。死ぬのが分かる。

  

 学校嫌いの僕が学校でその人生終えるなんて、なんとも皮肉なことだが、悲しむ暇もなかった。



 たったひとつ。たったひとつの悔いがあるとするならば、同じクラスの川内 ありな さんと付き合えなかったことだ。




 皆さん、さようなら。僕は死にます。そんなことを喋れるほどの体力はないし、そもそも喋ったって聞いてくれる友達もいなかった。















  





 「‥‥い、‥んせい、せんせい!起きてください!なに寝てんですか!」


 「ん‥‥‥」

 誰かが僕に話しかけている。

 誰だろう?目を開けてみよう。


 「あ!やっと起きた!次の時間は先生の授業でしょう?先生の魔術の授業、生徒に人気なんですからね!」


僕が授業?する側なのか?いやいやまさか。


 だめだ。状況が飲み込めない。

 ここはどこだ。職員室か?僕は死んだんじゃないのか?


 ハッとしてお腹を触るがなにもない。いや、あることにはあるがそれは僕のいつも通りのお腹である。

 

 怪我してないぞ。治ったのか?いや、治ったというより傷自体が存在していないようだ。あれは夢か?だとしたらここはなんだ?ここが夢か?分からない。

 

 覚悟して、目の前にいる女性に聞いてみた


 「あのぅ‥‥僕は誰で、ここはどこですか?」


 

 「ちょっと!まだ寝ぼけてるんですか?先生はこのヴェレノア学園の魔術担当の新米教師でしょ!しっかりしてください!授業に遅れますよ!」


 先生?ヴェレノア学園?なんだそりゃ。

 しかし、とりあえず僕は魔術の授業をするために生徒の元へ向かわなければいけないらしい。こういうときの対応力は僕は凄いぞ。なんたって刃物を持った不審者が現れてもあのように振る舞えるのだから。それが原因で刺されたのだが。


 とにかくお礼を言おうとしてまだ眠い目をこすり、さっきから僕に話しかけてくれる女性の顔をしっかり見るとその人は、僕がよく知っている人物。川内ありなさんにそっくりだった。



 なんだここは!どこだここは!ヴェレノア学園ってなんだ!なんでありなさんが!


 やっぱり湧き出てくる疑問をこらえて椅子から立ち上がり、職員室らしき部屋から出る。


 ふむ。右か、左か、直進か‥‥。どこに行けばいいのやら。



 何も分からず右往左往する僕はどうやら新米教師になったらしい。


 




 

これから、いろいろな人物との会話を書くのが楽しみです。拙い文章ですがよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ