プロローグ
少し書き方を変えてみました(^_^)
俺は必死だった。
眼の前の魔物を無我夢中で斬りまくった。
その度に魔物の残骸が地面に転がっていく。
だがいくら斬り続けても、魔物は容赦なく俺に襲いかかってくる。
一体いつになったら終わるんだ。
俺は両手に握られた二本の青い剣で、魔物の首を、腕を斬り飛ばしていく。
即死する奴もいたが、中にはそうならない奴もいた。
傷口から噴き出す黒い鮮血を抑えながら、悶え苦しむ。そして息絶えると腐敗し、ボロボロに崩れていった。
だがそんなことは気にせず、剣を振るい続ける。『魔物たちを一匹残らず殲滅する』、ただそれだけの思考を動力源に動いていた。
「うらあぁぁぁっっっ!!!」
気勢を上げながら、二本の剣を振り回し、魔物を一匹二匹と斬り倒していく。黒い返り血を全身に浴びながら、それでも動じることなく、ひたすら動く。
・・・絶対に殺す・・・一匹残らず殺してやる・・・・・
最早呼吸すらまともにできず、意識が朦朧としていき、目の前が真っ白になっていた。
それでも俺は動くのを止めなかった。目が見えなくなろうと、耳が聞こえなくなろうと、手足が引きちぎられない限り、戦い続けるつもりだった。
だが、体はもう限界に達していた。
その場でバランスを崩し、地面に倒れ込んでしまう。
「ぐっ!」
すぐに立ち上がろうとしたが、もう遅かった。
「しゃあぁ!」
魔物たちは雄叫びを上げながら、一斉に襲い掛かってきた。
そして、茶色い土の地面は、一瞬で赤黒い血の色へと染まった。
だがその血は俺のではなかった。その証拠に痛みを感じていない。況してや魔物のものではない。多分、今俺の体を覆いかぶさっている男のものだと思う。
男はそのまま俺の真横に仰向けで倒れ込んだ。俺は顔を横にし、倒れている男に視線を向けると、思わず目を見開いてしまった。そして震えながら唇を動かした。
「父・・・さん・・・・」
その男、俺の父親の服は多数の獣に引き裂かれたような痕と黒い返り血でボロボロになっていた。そして背中からは大量の赤い鮮血が溢れ出し、地面をその色で染め上げていく。父は俺に視線を向け答えた。
「・・・・大丈夫か」
弱々しく口を動かす父の姿は、俺の心を強く締め付ける。
「父さん・・・父さん・・・死なないで」
俺は何もできず、泣きじゃくることしかできなかった。そんな俺の頬を、傷だらけの手でそっと触れながら話しかける。
「・・・・男が泣くんじゃねえよ、・・・バカ」
父の大きな手が冷たくなっていくのを感じる。
駄目だよ・・・・・・そんなの・・・嫌だよ・・・・・・
ボロボロと大粒の涙を溢していく俺。
すると、父は零れる涙を親指でそっと拭うと、優しく微笑みかけてきた。
「いいか・・・・・お前は・・・・・・・」
直後、父は息を引き取った。
俺は父の死に顔を見て、父を殺した残忍な魔物たちに、激しい怒りを覚えた。
俺にもっと力があれば・・・。
「・・・殺してやる。おまえら一匹残らず、殺してやる。」
「うああぁぁぁぁぁ!」
この後どうなったかは全く覚えていない。
後から聞いた話、魔物はほとんど俺が殲滅したらしい。みんな口を揃えて称賛していた。
でもどこか気を使われているような気がした。
それもそうだ、父は死んだのだ。
自分を犠牲にして、俺を守ったのだ。
結局、父さんを、大切な人を守れなかった。
俺は父を救うことができなかった罪悪感と、自分の無力さに絶望した。
きっと自分と一緒にいる奴は不幸になると思って。
そして誰とも関わらず、孤独に生きていくと心に誓った。