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9月9日は重陽で秋のひな祭りだが少し考えさせられたぜ

 さて、9月になると大分寒くなってくる。


 現代で言えば10月相当だから当然といえば当然だし、この江戸時代初期は小氷河期だから余計だな。


 そして9月9日は重陽で菊の節句。


 遊女の衣も、衣替えで単から袷に替わるので、いつもどおり自分達で自分の衣服を縫い合わせる練習をさせているし、新しい衣装を太夫や格子太夫などに買ってきたりもする。


「みんなちゃんと縫えたかー」


「大丈夫でやすよー」


 楓などはもうなれてきたようで、きちんと縫えているな。


「わっちなんかは、結局新しい衣装を買わんといけないんでやすけどな」


 苦笑しながら二代目藤乃はそういう。


「まあお前さんは仕方ねえよ。

 それも合わせての太夫だ」


「まあ、そうなんでやすけどな」


 太夫や格子太夫はいつまでも同じ柄模様の衣装ってわけには行かないんだが、これは21世紀の高級クラブなどのホステスなんかもそうだし、ある程度は仕事のために必要なものと割り切ってもらうしかない。


 そういった最新の流行になりうる衣装というのも、高級遊女である太夫や格子太夫の価値の1つだし。


 それからこの日は見世の前や部屋の中に菊を飾って其れを観賞したり、酒に菊の花びらを浮かべる菊花酒を飲むのと共に、春の桃の節句に飾った雛人形を蔵から出して飾るんだ。


「おにっぎょさんー」


 清花が雛人形に触ろうとしたので、俺はそれを止めていった。


「ああ、雛人形はちゃんと手を清めてから触るんだぞ」


「きよめる?」


「ああ、人形に触る前にはちゃんと手を洗いなさい」


「あーい」


 江戸時代の桃の節句と菊の節句では、友だちといっしょに雛人形などの道具でままごと遊びをする。


 ままごとは家事の練習の意味もあるので積極的に行うのだが、雛道具など大切なものに触るときにはそれに触れる前に、手を清める習慣をつけるということにも役に立たせているわけなんだな。


 そして、人形を子供に代えて厄を引き受ける対象とするには、むしろちゃんと子供に人形を触らせたほうがいいのだな。


 そして、七五三の前に穢や厄を落とすための行事としても本当は重要だったんだけど、21世紀にはほぼ残ってなかったりするのはこの時期は収穫祭があるからだろう。


 まあ、3月の半年後の天気の良い秋に、表に出して虫干しをすることにも意味があるわけだがそっちも面倒になったとかかもな。


 七五三(しちごさん)はお稚児(ちご)さんでもあるという。


「清花もそろそろ稚児行列に混ざってもいい頃かな」


「ぎょうれつ?」


「ああ、子どもたちで着飾ってお寺の前を歩くんだ」


「えびじょーも?」


「あ、ああ……海老蔵はいっしょに行くのは難しいかもしれないな」


 俺がそういうと清花は不思議そうに言った。


「なんでー?」


 それに対して俺は言葉に詰まる。


「それはだな……」


 海老蔵が非人身分だからとは、清花には言いづらいがどうしたものか。


「おてらいくならえびじょーといっしょがいいな」


「清花、残念だけどそういうわけにも行かねえんだよ」


「なじぇ?」


「お偉いさんがそう決めてるからだな」


「なじぇ?」


「んー、そこまで突っ込まっれうと俺も答えるのが難しいな……。

 海老蔵たちがお参りできるようにしてやりたいのは山々だが……。

 ああそうか、吉原の中の吉原弁財天やお稲荷さんならそれもできるな」


 俺はそういうと清花が笑っていった


「できう?」


 俺はうなずく。


「ああ、清花が言ってくれたおかげで、俺も自分の考え違いに気がついたぜ」


「ならえびじょーといっしょにいく!」


「ああ、そうしような」


 まあ浅草寺とかに一緒に行くのは難しいとは思うけど、吉原の中に勧誘した神社への稚児行列なら大丈夫だろう。


 海老蔵だけでなく他の一座の子供達も行くことができるようにしたいところだな。


 そして今年の七五三までにはそれを実際にできるようにしてやろう。


 将来的には歌舞伎役者なんかも普通に寺社詣でができるようになるといいんだがな。

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