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品川の人集めのために花火大会をやろうか

 さて、6月になると大川こと、隅田川の水神祭が行われ、それとともに花火大会が行われ隅田川での魚とり・納涼・水泳なども許可されるようになって、舟遊びや両国橋近辺の茶店、見世物小屋、寄席、食い物屋の営業が夜半までのびることで花見の時期以来の賑わいになる。


 一方江戸時代には潮干狩りはあっても海水浴というレジャーはないので、海はあまり盛り上がらない。


「うーん、品川の集客の目玉として花火大会でもするか」


 といっても花火は江戸市中での打ち上げは、火事の元ということで禁止なので品川で打ち上げてもいいかは確認や許可が必要だろう。


 尤も品川は江戸市中には含まれてないのではあるんだが。


「品川の名主に根回ししつつ、道中奉行に付け届をしておくか」


 道中奉行は、五街道である東海道・中山道・日光道中・奥州道中・甲州道中やその付属街道として主要街道の宿場駅の取締りや、公事訴訟、助郷の監督、道路、橋梁、渡船、並木、一里塚の整備など道中関係全てを担当するが、大名・高家・朝廷の監視を行い、武士が犯罪を起こしたときに裁きを行う監察官でもある大目付を兼任している高木守久がその職についている。


 まず俺は品川の名主のところへ赴いた。


「ちと邪魔するぜ」


「おや三河屋さん、今日はどうしたんで?」


「ああ、両国はそろそろ川開きで賑やかになるんだが、こっちも負けないように賑やかにするために花火大会を開くことや茶店、見世物小屋、寄席、食い物屋の営業が夜半までのびることをお奉行様に許可してもらおうと思う。

 そんときには品川の一般の旅籠にも人が集まってくると思うんだ。

 なんで陳情の場に一緒に来てくれるか、協力してくれるっていう書面をくれねえか?」


 俺がそう言うと名主はキラっと目を輝かせていった。


「なるほど、品川遊郭だけでなく、品川全体での花火祭りとし、銭を落としてもらおうというわけですな。

 それはむしろありがたいですよ」


「じゃあ、賛同してもらえるか?」


「ええ、もちろんですよ、品川の旅籠や茶屋への連絡も行っておきましょう」


「そいつは助かるぜ」


 早速とばかりに、品川の名主に一筆俺を品川の名主に代理人とするという書状を書いてもらって、俺は道中奉行のもとへと向かった。


 奉行所はかなり混んでいたが、手渡した付け届けのおかげで比較的早めに奉行に合うことができたので、俺は挨拶をしたあと書状を差し出した。


「ふむ、品川で花火大会を行い、茶店、見世物小屋、寄席、食い物屋、舟遊びの営業を夜半までのばしたいとな」


 高木守久は書状を読むと、顔を上げて俺にそう言ってきた。


「はい、花火の打ち上げは浜辺の建物の少ないところで行い、おもちゃ花火は火が消えたら必ず水を張った桶に捨てるようにさせ、火事を起こさせぬようにいたしますゆえ、どうか許可をいただきたく願います」


「ふむ、許可をするのはやぶさかではないが、それを行うことによってなにか得はあるかね」


「はい、品川に人が集まり銭を落とせば、街道や本陣や脇本陣、また伝馬駅伝のための整備費用を十分得ることができるようになるかと。

 そうすれば、助郷の負担を減らし、それによりむたの百姓たちの不満も解消されるでしょう。

 その分は花火を見に来たときに銭を落としてもらえば、百姓は花火を楽しみながら銭を落とし、お上にはその銭を本陣や脇本陣、伝馬駅伝の整備に使うことができるかと」


「ふむ、双方損はないというわけだな。

 そしてお前たちも銭をえられると」


「はい、我々も損をすることはございませぬ。

 いかがでございましょうか」


「ふむ、良かろう。

 品川における花火や茶屋などの深夜の営業を許可するものとする」


「ありがとうございます」


 よしこれで品川に人を呼び込むことができそうだ。


 吉原に戻ったあと、俺は水戸の若様に呼ばれて揚屋に向かって、藤乃が持ってる部屋へ向かい、座敷に上がることにする。


「三河屋楼主戒斗、失礼致します」


 すっと障子を開けて中を見る。


「うむ、楼主よ来たか。

 何やら話があると聞いたが?」


「はい、水戸の若様にお願いがございます」


「うむ、一体何だね?」


「品川宿にて打ち上げ花火を行う許可を頂いてまいりました。

 ついてはそのときに水戸の大名花火を打ち上げるご協力をいただければと?」


「ふむ、ではその時は何が食べられるのかね?」


「新鮮な海の幸をたくさん用意いたしましょう」


「ふむ、品川の魚はうまいと聞くな」


「はい、江戸湾で取れた魚や貝をすぐに調理いたしますゆえ、旨いと評判を頂いております」


「ふむ、ではそれを馳走になる代わりに協力するとしようか」


「ありがとうございます」


 これで花火大会に仕掛け花火やおもちゃ花火だけでなく、派手な狼煙花火も上がればきっと花火大会は盛り上がるだろう。


 当日が楽しみだ。

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