表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

第三話

 イートン村は海辺にあるだけに魚介がよく捕れる。そのほとんどが漁師で、捕った魚介類を近くの町や時々訪れる旅商人達に売って生計を立てている。

 小さい村なので、店も一軒ずつあるだけ。売っているものもそこまで多くない。王都などの大きなところと違って遊ぶところもほとんどないので、大体は外で遊ぶ。大人達も、唯一ある喫茶店などに立ち寄っては、会話に花を咲かせたり、のんびりしたりと。

 まあ、平和なところだな。


「毎度」


 そんなところだからこそ、子供達ものびのびと成長できるのだろう。俺は、先日レイラが壊してしまったボールを近くの町まで購入し来ていた。

 やはり、村の店にはボールがなかった。普通だったら半日もかかるが、俺は転移魔法があるので行きも帰りも一瞬。学校が終わり、生徒達が帰ったのを見計らって休憩時間を使い訪れている。

 ついでに、今晩の夕飯の材料を買っていこうか。

 

 一人暮らしをすると決めてからは、自分のことは自分でやる。そう思い、今までやってことなかった料理にも挑戦中。

 やってみると簡単なこともあるが、難しいこともあり大変ではなるがやりがいはある。

 ボールを片手に食材を購入しようと移動していると。


「アレン様」


 背後から俺の名を呼ぶ声が聞こえる。俺は、振り返ることなく移動しながらその声に耳を傾ける。


「どうだ? 魔界からの侵攻は?」

「大丈夫です。さすがに、アレン様が居る限りは他の悪魔達も容易には攻め込んでは来ないでしょう」


 彼は、俺の側近である悪魔で名をジレットと言う。常に素顔を隠すかのように顔半分を隠す仮面を被っており、結界魔法に関しては魔界一だと俺は思っている。

 こいつとの出会いはかなり衝撃的だった。今でこそ、俺と一緒に親父を裏切り人間界に滞在するほどの忠誠心を持っているが、最初は……。


「そうか。他の皆は元気か?」

「はい。各々、人間界を楽しみつつアレン様の命令を忠実に守っております。……アレン様は、教師生活はいかがですか?」

「退屈しない。普通の教師だったら、こうはなかっただろうな。あの子達だからこそ、毎日が飽きないんだろう」

「そうですか……では、私はこれで。また何かあれば、ご報告に参ります」

「ああ。頼んだ」


 こうして、ジレットの気配は消えた。それと同時に、俺は美味そうな豚肉を発見した。今日の夕飯は、こいつにするかな。

 そろそろ休憩時間も終わりだから、早めに戻らないとミーナ先生が心配するだろう。この前も、少し休憩時間の終わり時刻を過ぎてしまったんだ。教師は、俺とミーナ先生に校長しかいないからな。また、生徒達のハチャメチャ加減についていけず辞めてしまったんじゃないかと戻った時は心配されたのを今でも覚えている。


「すまない。この豚肉をひとつ」

「あいよ!」







「今日の授業は、魔法についてだ。で、その魔法についてだが……アイナ」

「はいっす!! 魔法とは、生物の体内にあるマナと呼ばれる生命エネルギーを変換し、魔力と呼ばれる特殊な力を糧として発動する術です!!」

「その通りだ。寝起きにしては、はきはきとしていて結構」

「えへへ……」


 俺に使命されるまで、気持ち良さそうに涎を口から垂らしながら寝ていたアイナ。今でも、少し寝癖がついている。

 また魔法薬の実験で徹夜をしたんだな。


「魔法は、今でこそ様々な種族が使っているが。昔は、そんな力はなかったんだ。魔法が生まれたのは、初めてこの人間界に魔物という生物が生まれた時だ。今までは、ナイフや剣、弓などで動物達や他の人間同士での戦いしかなかった人間界に、魔物と呼ばれる特別な生物が生まれたことで、神々与えた力と伝えられている。ちなみに、魔法には基本となる属性。火、水、風、地があるが……ユーリ」

「は、はい!」

「他には、どんな属性がある?」


 何かを我慢していたユーリは、俺に呼ばれ慌てて立ち上がる。まだ頬を赤く、緊張した表情だ。

 まさか、いつもの発情か? ユーリはまだサキュバスの力を制御できないでいる。そのため、周りを魅了させないために極力肌を隠しているが。

 それでも、力が暴れ出し発情してしまうことがある。おそらく、さっきはそれに耐えていたんだろう。悪いことをしたか?


「え、えっと。光と闇。それと複合属性があります!」

「よし。座っていいぞ。それより、ユーリ。大丈夫か? 無理だったら、我慢せずそこで寝ている天使に思いっきり抱きついてもいいんだぞ」


 視線を横にずらすと、いつものように天使シルヴィが退屈そうにうつ伏せで寝ている。ユーリの発情は、誰かに抱きつき肌と肌をぶつけ合うことで、発散できる。

 しかし、ほとんどの者達は耐性がないため、サキュバスのフェロモンに魅了されてしまい、とんでもないことになってしまうのだ。

 が、シルヴィだけは大丈夫。力を失われたとはいえ、天使の並外れた耐性は健在。そのため、いくら抱き疲れてもシルヴィはどうってことはないというわけだ。


「で、でも今は授業中ですし」

「俺が許す。そのままにしておけば、お前がおかしくなってしまうからな。それに、そこの天使を起こすという意味もある」

「で、では、その……ごくり」


 まるで気づいていない爆睡中のシルヴィを見詰め、ユーリは息を荒げながら喉を鳴らす。

 そして。


「し、シルヴィちゃぁん!!」

「ひゃうっ!? ななな、なにごとぉ!? って、ユーリ!? また発情したのぉ!?」


 シルヴィを押し倒す勢いで、抱きついたユーリはそのまま驚くシルヴィに馬乗りとなる。


「えへへへ……ごめんね、ごめんねシルヴィちゃん。でも、私を受け入れてくれるのはシルヴィちゃんしかいないの……だから、だから!!」


 とろけた表情で謝りながら、シルヴィに手を伸ばしていく。


「ひえええええっ!?」

「さて、全員起きたところで授業再開だ」

「助けてよー!!!」


 助けを求める天使の囁き、いや悲鳴が聞こえるが、これは教師として不真面目な生徒への制裁。それと同時に、苦しんでいる生徒を助けている。

 

「真面目に授業を受けないシルヴィが悪いよ」


 レイラの言う通りだ。


「先生。ついで、天使の羽をこの魔剣で切ってもいい?」


 と、カトレアが魔剣を取り出そうとするが、俺は首を横に振る。


「止めろ。そんなことしたら、魔剣を取り上げるぞ」

「じゃあ、止める」


 素直でよろしい。今だ、ユーリの発情が収まらぬまま授業は続く。俺は、白いチョークを片手に黒板へと文字や魔方陣などを書き込んでいく。


「さっき、ユーリが説明してくれたが。基本の四属性の他にも光と闇。更に複合属性と呼ばれるものがある。だが、光と闇は誰でも扱えるわけじゃない。光は、天使や神の祝福を受けしものしか扱えず。闇は、悪魔。または悪魔と契約した者達にしか扱えない。だが、極稀にそうじゃない普通の者が闇属性魔法を扱えるケースもあるんだ」


 そう。悪魔と契約した者。闇属性魔法は、元々悪魔だけの魔法だった。それが人間界で広まっているのは、俺の祖父がこの人間界に侵攻してからだ。その時、人々を洗脳し契約をさせ闇属性魔法を広めた。そのせいで、闇の因子が世界中に広まり悪魔でもない、契約もしていないのに闇属性魔法を使える子達が生まれることがある。

 それに祖父が倒されたとはいえ、全ての悪魔が倒されたわけじゃない。祖父の代の悪魔は、まだこの地のどこかに潜んでいると言われているようだ。


「ちなみに、その極稀が私」


 どうだと言わんばかりにカトレアがどや顔をする。


「そして、次に複合属性だ。これは読んで字の如し。複数の属性が合わさった魔法だ。普通の魔法と違って複数の属性を合わせるため、扱いも難しく、編み出すのも困難だ。だが、それだけに強力。扱えるようになれば、戦闘も楽になり、ちょっとした人気者にもなれる」

「ちなみに、その人気者が私」


 と、またどや顔を決めるカトレア。それに反応したのは、まだ若干眠そうにしていたアイナだった。眠気が覚めるほどの衝撃だったようだ、彼女にとっては。


「え!? カトレア。複合魔法を使えるんですか!?」

「……嘘」

「嘘!?」


 まあ、嘘だろうな。


「簡単に騙されすぎだよ、アイナ。複合魔法は、才能があっても簡単には習得できないって言うし。いくら、カトレアが魔剣に選ばれたって言ってもね」

「でも、いずれは会得する。そうすれば、魔法剣士カトレアとして人気者にっ」


 慣れればいいな。


「いいか? 複合魔法は、いわばオリジナル魔法だ。それゆえに、人によって魔法の種類は数え切れない。お前達も、時間があれば挑戦してみろ」

「それよりも助けてよー!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ