47.その後
数週間後。
巨大な敵は去り、街も平静を取り戻した……と言いたいところだが。
実は今朝も、あの女性記者が来ていた。
「君でしょ」
女性記者はずばり聞いてきた。
「何がですか?」
「しらばっくれちゃってー。謎のヒーローくん」
「違います」
「わかってるのよ。生配信してたのも君だって」
「何言ってるか、わかんないす」
「まあいい。許してあげるわ」
女性記者はそう言うと、あっさり帰っていった。ただし、帰り際に、
「またね」
と、言い残して。また来る気なのか……。俺は冷や汗を拭きながら、校門をくぐったのだった。
*
あの日以来、ネット界隈は騒然としている。
生配信の影響は大きく、ときおり、配信を真似てネコの着ぐるみを着た若者が巷を闊歩しているのを見かけるくらいだ。
そして、あの配信は本物だったのか、と数々の検証サイトが乱立していた。
妖精が映ったとか、魔物が映ったとか、明月ほたるが映ったとか。あれ以来、行方不明者が減ったのは確かだと、今でも議論がかまびすしい。
「もったいなかったんじゃない? せっかく有名人になれたのに」
隣を歩く涼子が言う。
「俺は有名人って柄じゃないんだよ」
「でもさでもさ」
後ろを歩く八神はニヤニヤしながら言う。
「流行語大賞間違いなしですよね」
涼子は「うんうん」とうなずくと、凛々しい表情を作り、言った。
「フォロワーなめんなよ?」
「もうやめてくれよ」
俺は懇願した。ここのところ、ずっとからかわれてばっかりだ。まったく、何であんなくさい台詞吐いちまったんだろう?
「やめなよー」
ほたるが止めに入る。
配信のときに顔が映ってしまったほたるだが、マスコミ相手にはしらを切り続けている。だか、それが謎を呼び、ほたるの人気は、さらに高まっている。
それでもほたるは頻繁に俺たちのところへ遊びにくるようになった。仕事はどうなってるんだ、と言いたい。だが、今は加勢が必要だ。
「そうだ、ほたる、言ってやってくれ」
俺はそう頼んだ。
「その名言もいいけど、私はあっちの方が好きだなー」
「どっち?」
俺は嫌な予感がしつつも訊ねた。
するとほたるも、これ以上はないほど凛々しい顔で言ってのけた。
「愛と応援は強制して手に入れることはできないんだ!」
「やめろー!」
勇者はひどく赤面した。
(了)
これでこの話は完結です。
ラストは太宰治先生をオマージュさせていただきました。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!




