46.妖精の帰還
配信を終え、みんな着ぐるみを脱いでいた。外の空気が清々しい。
「ひかり」によって、魔王は、跡形もなく、消し飛んだ。あの老人も。そう、俺たちは勝ったのだ。
暗くなりかけた空に、うっすら月がかかっている。俺はいつかのことを思い出していた。ふたつの月をバックに、ポーティが月の詩について語ったときのこと。あのときに似ている。こっちの世界には月がひとつしかないけれど
。
みな、口々に健闘をたたえ合っていた。明るい口調を崩さないけれど、わかっている。
別れが迫っていた。
住む世界も、食べるものも違う。ふたつの月がある星に暮らし、食事は蜜を吸うだけ。ていうか、そもそも種族が違う。
でも俺たちみんな、彼女のことを、長年連れ添った家族みたいに感じていた。
「じゃ、私、帰るね」
俺たちみんなに向かって、ポーティは言った。
「……また、遊びに来てよ」
涼子が言う。すると、
「わかんない。もう必要がなくなったから、こっちに転移できなくなるかも」
元気がとりえのポーティが、悲しそうな声で言う。何だか、光も弱くなっているような気がする。俺も、沈んだ気持ちになってくる。
「妖精さんと会えなくなるのは残念だなあ」
八神も悲しそうに見守っている。
「……でも、また会えるかもしれないでしょ。……みんなが望んだら」
ほたるが言った。その言葉にポーティの声は少し明るくなった。
「そうね。みんなが望んだなら」
「望むさ。俺たちは、待ってる。お前のこと」
俺がそう言うと、妖精はまた明るく輝きだした。
しばらく、みんな、何も言わない。無言で、別れの時間を惜しんでいた。
「じゃあ、行くね」
ポーティが思い切ったように言う。
「じゃあな、ポーティ」
「バイバイ、セイヤ。みんな。またね!」
そう言うと、妖精は呪文を唱え……消えた。




