4.召喚
またあの夢だった。
妖精は出てくるなり、言った。
「もう、準備は十分よね」
「何が」
「ずいぶん特訓したもんね」
「……だから?」
「さて、今日はいよいよ、あなたをこっちへ召還するわ」
「は?」
「言ってなかったっけ? とにかく、時間がないの。急いで来て、私たちの国を救って!」
そう言うと、妖精は何やらぶつぶつと呪文のようなものを唱え出した。
え? え? 本気じゃないよね?
「ちょっとま……」
言う間もなかった。目を開けると、俺の身体は浮上していた。ベッドの上数十センチの高さに浮いている。
「お、おい、下ろしてくれ」
だがそれどころか、どんどん身体は上がっていき、そのまま屋根へ向かって突進する。
ぶつかる! そう思った瞬間、屋根に小さな穴が開いた。あっという間にその穴はぐにゃっと広がり、空が見える。空には僅かばかりの星が瞬いている。
と、空に向かって、トンネルのようなものが出現した。そのトンネルの壁は白く、それがぐるぐると回っている。いや、壁と言うよりは、雲のような、不定形の物体でできているようだった。
俺の身体は、そのトンネルを猛スピードで駆け抜けていった。凄いGがかかる。
「と、止めてくれ!」
一体どこまで行くのか――眩暈がして、意識が遠くなった。
気がつくと、俺は、冷たい床の上に座っていた。どうやらそれは石畳のようだった。
「ようこそ勇者さま、私たちの世界へ」
見上げると、光る妖精が、にこにこと笑っていた。