35.魔王の位置
俺には、初めて見る敵に対応できる、応用力がついた。
実戦訓練を積むに従って、ほたる、涼子、二人のサーチ能力も向上していた。
準備は整った。
今日は、とうとう、魔王の位置を特定しようと二人が挑戦している。
目を閉じて集中する二人。
俺はポーティに小声で訊ねた。
「見つかるかな?」
「たぶん」
「そうか……。遠いかな?」
「わかんない」
「そもそも、俺を追ってこの世界に来たんだ。そんなに離れているとは思えないが――」
そう、そこまで遠くではないはず。だが、確かとは言えない。ポーティの話によると、初めは俺を追ってきた魔王も、この世界の魅力に取り憑かれ、俺のことなんか興味を失ったらしい。
奴がいるのが、もし、外国だったりしたらどうしよう。パスポートを持っていない俺には、追跡の手立てがない。その場合、戦わなくても済むわけだが……。くそ、一体俺はどっちを望んでいるんだ。
「どうだ?」
ほたるが手をあげ、指し示す。
「この方向じゃないかしら……ほたるちゃんもそう思う?」
「うん、きっとそうね」
「そうだわ。あっちにすごく大きな魔力がある」
「そっちで決まりみたいね」
ポーティが言う。
「この方向に、300キロ以上?」
涼子がそう言うと、
「そうね。400――いや、500かも」
ほたるも同意した。どうやら間違いなさそうだ。
「この方角へ4、500キロ……一応日本か」
日本。奴は日本にいる。覚悟を決めるしかないのか。
だが、どうやら本州をずいぶんと北上した位置らしい。
「電車移動だな。泊まりになるかも」
俺は言った。
「行くとしたら、休みの日か」
「次の休みに出発しましょう」
ポーティが言った。
「本当に行くのか?」
「当然でしょ」
俺はまだ気乗りしなかった。当然だろう、とてつもなく大きな魔力を持つ魔王と戦おうというのだから。
だが、前にも俺は命がけで戦ったことがあるじゃないか。自分にそう言い聞かせる。
異世界で、ポーティとともに、魔王(もどき)に戦いを挑んだ。あのときたしかに、俺は一度覚悟を決めた。
それでも、やはり、いざとなると怖気づく自分がいた。今度の敵は、もどきじゃない。本物の魔王だ。
その魔王と命を賭して戦う。そんな覚悟、一介の高校生に、そう簡単にできるはずもなかった。
だが、それからまもなく、もっと深刻な問題が起きたのだった。




