34.新タイプ
女性記者が来て以来、俺たちはしばらくシャービル狩りを休むことにした。
俺たち三人が夜中にうろついているところを、記者に見られると、まずい。
それだけならまだマシだが、シャービルと戦っているところを目撃されたら、決定的だ。
少しの間、休息した方がいい。みんなで相談の結果、そう判断したのだった。
そして数日が経った。
俺たちはシャービル狩りを再開した。どうやら動いているのは、あの女性一人らしく、見つかる危険は少ない、と踏んだからだ。そりゃそうだ、謎のヒーローなんて、普通は信じない。
最初は、ビクビクしながら再開したが、あれっきりもう記者は現れそうになかった。きっと編集長に怒られでもしたのだろう。
そんなことより、今日の戦いは、いつもと一味違った。
「こっちにいる!」
ほたるが叫ぶ。すると、
「うん。だけど……、あれ?」
「どうした、涼子」
「何かいつもと違うような」
「違う?」
「わかんない。とにかく行きましょう」
ほたると涼子の先導で、俺とポーティはシャービルのいる方向へ向かう。
「いた!」
ほたるが叫ぶ。俺は駆けて行って確認する。
そこには、確かにシャービルがいた。しかし、その姿はいつも見るシャービルとは異なっていた。
「何だあれ。いつもと違う……」
そう、そいつには翼があった。身体の両側に、大きな翼が。
見たことのない敵に、緊張感が高まる。とにかく、倒さなくちゃ。俺は身構えた。
すると初めて見るそのシャービルは、翼を大きく広げた。鱗で覆われたシャービルの身体に、巨大な鳥の翼。あの翼、一体何メートルあるんだ。
次の瞬間だった。そのシャービルはその大きな翼で羽ばたき始めた。そして、ばっさばっさと大空に舞い上がったのだった。
「嘘だろ」
我が目を疑う俺の前で、シャービルは滑空を始めた。
「逃げるわ!」
だめだ。逃がすわけにはいかない。きっとあいつは人を襲う。だけど、どうすれば……。
俺はとっさに思いついたことを、行動に移した。
「ひかり」を、放つ。
シャービルに向かってではない。下へ、地面へ向けて放った。
衝撃とともに、俺の体が宙へ向かって弾け飛ぶ。
「すごい!」
ポーティが感嘆の叫びをあげる。
一瞬後に俺は民家の屋根の上にいた。
「うぅ……」
思わずうめく。右肩から落ちた。
「急いで、セイヤ!」
俺は、そこから、上空のシャービルめがけて、「ひかり」を放った。
ズバズバと「ひかり」が魔物の体を切り裂く。
シャービルは断末魔の悲鳴をあげた。
「やるわねセイヤ」
ポーティはずっと感心している。
「あんな使い方、私も教えていないのに」
「晴也くんかっこよかったわよ」
ほたるも言う。
「まあまあね」
と涼子。
「そうかな……」
皆に褒められて、俺はまんざらでもない。
どうやら、いつの間にか俺も結構成長していたらしい。始めて見る敵にも対応できた。みんなと実戦の経験を積んできたおかげかもしれない。
「これなら、魔王と戦えるかも」
ポーティは言った。
魔王か……俺は思った。
強大な魔力を持つ魔王。そいつと、対等に戦うことができるだろうか。
俺に、世界を救う力があるのだろうか。
真剣に考えていると、ポーティが、静かに言った。
「そろそろ、魔王の位置を特定しましょう」




