33.取材
「学校に、取材が来てるらしいよ」
登校するなり、教室でかけられた涼子の言葉に耳を疑った。
「何だって?」
「外のところで来る人みんなに聞いて回ってるんだって。……ヒーローのこと」
「何でばれたんだ?」
俺はあたふたしながら聞いた。
「落ち着きなさいって。ただの聞き込みでしょ。ばれたんなら、直接私たちのとこへ来るはずだもの」
「そ、そうか」
「ま、今向かってるのかもしれないけどね」
「! どどどどうしよう」
「冗談よ」
涼子は意地悪に笑った。
こ、こいつ……。何でこんなに平然としてんだ。自分だって当事者のくせに……。
その日一日、俺はまた、警察が教室に乗り込んでくる妄想と戦わなくてはならなかった。
放課後、校門を出ると、何人かの生徒が道で輪を作っていた。何だろう、と見てみると、その輪の中で、スーツ姿の女性がメモを取っている。
「げっ」
取材記者に違いなかった。まずい、と思った。俺は気づかれないように、通りすぎようとした。だが……。
「あっ、君、ちょっと待って!」
女性記者が俺に気づいて、駆け寄ってくる。やばい、やばいぞどうしよう。
気づかれる危険性、大!
だけど、ここで逃げたら余計怪しまれる。素知らぬ顔で取材を受けるしかない。
「ちょっと訊かせて欲しいんだけど」
「何ですか」
「私、こういう者です」
女性は、名刺を差し出してきた。名刺を見ると、「〇〇社 〇〇〇〇編集部」と書いてある。例の雑誌の記者だった。
俺は確信した。この人、あのときの女性だ。間違いない。
「謎のヒーローの取材をしてるの」
どきり、と心臓が音をたてる。
「へえー」
「単刀直入に聞いちゃうけど、この学校にヒーローと思われる生徒がいないかな?」
「え! ここの生徒なの? 謎のヒーロー」
精一杯の演技。
「まだわからないんだけど……もしかしたら」
「何故ここの学校の生徒かもしれないと思うんですか?」
すると女性記者は言った。
「君だけに教えてあげる。あの夜、暗くてよくわからなかったけど、女の子の一人が、制服を着ていたと思うの」
涼子だ。あいつ、あの日、制服で来たんだった。まずいなあ。
「県内の高校全て調べたわ。ここの制服が一番近いみたいだった」
「そうですか」
「君、何か知らない?」
「知らないす」
「本当に?」
「本当です」
「……君の声、どこかで聞いたことがある気がするんだけどなあ」
マズイマズイマズイマズイ! これ、ほぼバレてない?
い、いや、大丈夫。証拠は何もない。だだだだ大丈夫だ。
「気のせいです。俺、知りません」
内心、冷や汗をダラダラかきながら、俺は涼しい顔を繕って言った。
「ねえ、公表しないから教えてくんない? 謎のヒーローの正体。知ってるんでしょ?」
「俺、何も知らないので」
これ以上話していてボロが出るとまずいと思い、その場を去ることにした。歩くとき、危うく手と足が一緒に出そうになった。
後ろで、女性記者の声がする。
「そっか。残念」
ふー、何とか耐えた……。
耐えたことにする!




