28.自信
それから俺たちは、夜な夜なシャービル退治にいそしんだ。ほたるも俺も、段々と力の使い方が上達しているのがわかった。何でもそうだが、成長を実感するのは楽しい。
ただ、ほたるの仕事が忙しくて、そう頻繁に繰り出すわけにはいかなかった。
「ごめんなさい」
ほたるは言った。
「あたし、仕事やめようかな」
「ダメだよ、だめだめ!」
俺は言った。
「もったいないよ。ほたる、あんなに歌うまいのにさ」
すると、ほたるは顔を輝かせて言った。
「ありがと。……ほんと言うとね、私、あんまり歌に自信ないんだ」
「本当に?」
「歌だけじゃない、私、自分に自信がないの」
ほたるは俯いた。
「それなのに、気がついたら皆からちやほやされているし、何だか信じられない」
信じられないのはこっちだった。明月ほたるが、自分に自信がないなんて。俺はこの耳で聞かなかったら決して信用しなかっただろう。でも、自分に照らし合わせてみると、何だか合点がいくこともある。
「その気持ち、わかるよ」
俺は言った。嘘じゃない。俺にも経験がある。
自分には何の取り柄もないと思っていたのに、ある日突然、勇者様と呼ばれる。皆が自分をちやほやする。どこへ行っても、自分を持ち上げてくれる。
それは嬉しくもあるのだが、どこか、本当の自分が置いてけぼりをくらったような気にもさせられるものだった。ほたるも、きっと、本当の自分と皆の期待のギャップに苦しんでいるのだ。
「だけど、ほたるは歌、めっちゃうまいよ」
「そうかな」
「間違いないね。皆そう言ってる」
「……晴也くんは?」
「もちろん。最高だと思う」
「えへ、お世辞でもちょっと自信ついた」
「お世辞なんかじゃないよ。あんないい歌声、他にないよ」
「調子に乗るから、あんま褒めすぎないで」
「とにかくさ、仕事はやめない方がいいよ。何とかなるさ、魔王の一匹や二匹」
とは言ったものの、シャービルの侵攻は勢いを増しているらしく、ニュースが扱う犯人不明の殺傷事件や、行方不明事件は数を増していた。世間が、魔物の存在に気づく日も近いように思われた。
「そうだ……魔王。そろそろ、魔王の位置、わかってきた?」
「うーん、それなんだけど……」
ほたるは浮かない顔で言った。
「大きな魔力が、どこか遠くにあるのはわかるんだけど、正確な位置が特定できないの。力の使い方が、まだ未熟みたい。……ごめんなさい」
「謝ることないよ」
俺が言うと、ほたるは微笑む。ポーティも、
「修練を積めば、必ずわかるようになるわ」
「そう。そのうちわかるさ」
俺もそうは言ったものの、実は魔王の場所がわかるのが怖かった。でも、いつまでもわからなければいい、とは言えない。
そのとき、ほたるの携帯が鳴った。
「あ、マネージャーさんからだ」
「仕事?」
「多分」
ほたるは電話に出ると、しばらく喋ってから切った。
「ごめんね、私行かないと」
「ああ。じゃ、また」
「うん、またね」
そう言うとほたるは走っていった。金色の髪の毛が、風になびいていた。
俺は言った。
「どう思う、ポーティ」
すると上空にいたポーティが返事をした。
「うーん。もう一人くらい、要員が欲しいわね。あの子忙しいみたいだし」
「もう一人? そんなに能力者っているもんなのか?」
「一応、探してみる」
ポーティは遠くを見ながらそう言った。




