27.実戦練習
また苦痛の時間が始まる。
学校の授業とは、どうしてこう退屈なのだろうか。そして、これほど苦痛でありながら、何故逃げることが許されないのだろうか。
俺が悪いのかもしれない。授業を聞けばいい、勉強すればいいだけの話なのかもしれない。
そんなこと、わかっている。
けれども、俺みたいな学校の授業に対する不適合者にとって、それはやはり苦行に等しい。
だから俺は授業を聞き流し、ひたすら耐えるのだ。
そして無駄にしてしまった時間の長さに、途方に暮れてしまうのだった。
そんな風にして、数日が経った。
夕飯を食ってから、すぐに俺は家を出た。
明月ほたるに会うためだ。ほたるとは例の公園で落ち合うことになっている。
あの誰もが知っている有名人と待ち合わせしている、というのが、ちょっと自分でも信じられない。これが、魔物との闘いのためでなかったら、皆に自慢したいところだ。
……と、そこでちょっと疑問が生じる。何の用もなかったら、ほたるは俺と待合せたりするだろうか。俺なんかと個人的に……いやいや、俺は何を考えているんだ。
公園につくと、ほたるはもう来ていた。
「ハーイ、晴也君」
片手をあげて、ほたるが笑う。傍らに妖精がいた。あの日、妖精はほたるについていった。ほたるが寝るベッドの横にいた方が夢に長く入れるらしい。
俺が二人の元へ着くと、休む間もなくポーティが言った。
「じゃあ、さっそくはじめましょ」
「な、何を?」
「決まってるでしょ、実戦練習よ」
「左、前方二百メートル!」
「はいよ!」
俺とほたるは夜道を走っていた。上空には妖精が飛んでいる。
ポーティの特訓が済み、ほたるはサーチ能力を使えるようになっていた。今、実際にシャービルを追っているところだ。
「あと百メートル!」
ほたるは、きびきびと話し、走る。さすが歌手だけあって、声がよく通る。それにダンスをしているからか、走るのも速い。もしかして、俺より体力があるんじゃないか。置いて行かれないように、俺は必死で走った。
「あと五十、三十、……近いわ!」
「どこだ?」
「あそこよ!」
見上げると、塀の上にシャービルがいた。例によって、歯だらけの口に涎を光らせている。
「グロテスク……」
ほたるは若干青ざめている。それでも二本の足でしっかり立っているところはえらい。俺だって初めのうちは腰を抜かしそうなくらい、怯えていた。いや、今でも全然慣れてはいない。自分の心に鞭打って戦っているのだ。
「下がって!」
俺は叫んだ。ほたるを後方に下がらせる。同時にシャービルが塀から飛びかかってきた。
俺は「ひかり」を発動して、五連撃した。一つがはずれて、一つがかすった。あとは、全てクリーンヒットした。シャービルは地面に落ち、無残な姿をさらした。
「よし!」
「やったー!」
「上出来ね」
ポーティが褒める。
ほたるにサーチを任せての初戦は、完勝だった。この結果に多少気分もよくなる。ほたるはとうだろうか。俺は尋ねた。
「どう? 気分は」
ほたるは興奮しているらしく、頬を上気させながら言った。
「全然平気」
そして、にっこり笑うとこう付け足した。
「何なら、もう一匹いっとく?」




