26.説明
「ふーん……」
明月ほたるが神妙な顔でうなずく。
俺たちは今、並んで公園のベンチに座っていた。
俺はほたると一緒にいるところを、誰かに目撃されないかひやひやしていた。なんせ、相手は超有名人だ。見つかれば大騒ぎになるかもしれない。そしたら、俺のことも、誰だあいつはと話題になるかも。
人目をひくのは避けたかった。脳内で再生されるのは、実験台の上で解剖される自分の映像。何故か、その想像の中で俺は、麻酔すらかけられていない。嫌な妄想だった。
しかし懸念していたように人が通りかかることはなかった。そういえばここに人がいるのを見たことがない。こんなに寂れていて、大丈夫なのか? この公園。俺は逆に心配になった。
ポーティは、明月ほたるに、今までの経緯を説明している。ほたるは、驚きながらも、興味深そうに聞いていた。
「いいのか、全部話しちまって」
俺が訊くと、ポーティは言った。
「いいのよ。この子も能力者なんだから」
「私が能力者!?」
ほたるが叫んだ。
「そう。サーチ能力。敵の場所を特定する能力よ」
「それが私に? へえー、そうなんだ」
ほたるは何だか嬉しそうだ。
「危険だってこと、わかってる?」
俺が尋ねると、ほたるは言った。
「わかってるわ、そのくらい。私だって、あいつを見たのよ」
そうだった。ほたるはシャービルに遭遇している。あの姿を見ておきながら、戦う気になるなんて、俺よりよっぽど肝が据わってる。
「それで」
ほたるは言った。
「どうやって使うの? その能力」
「それは私が教えるわ」
ポーティが言った。
「今夜、夢の中で」
その夜、俺はなかなか寝つけなかった。
どうしても、ポーティと明月ほたるのことを考えてしまう。
二人は今、特訓の最中なのだろうか。夢の中で、敵のサーチ方法を学んでいるのだろうか。ポーティの教え方は結構厳しい。ほたるはついていけているだろうか。
いや、と俺は思う。ほたるなら大丈夫だろう。ほたるは、案外芯の強い子みたいだ。それにきっと、万年成績底辺の俺より物覚えもいいはずだ。
そんなことより、魔王。魔王のことが問題だ。ヤツは本当にこの世界を支配する気なのか? だとしたら、人間をどうする? 奴隷にするのか、それとも皆殺しにするつもりか……。
先生や、クラスメイト、親や友達。みんな、殺されてしまうんだろうか。
俺が戦わなかったとしたら、この世界はどうなるのか。
いろいろな思いが頭をめぐり、俺はまた寝返りを打った。




