25.友達
「あ、明月ほたる……」
「どうも」
明月ほたるは微笑むとこう言った。
「キミは? 何くんかな」
俺が黙っていると、
「そっちばっかり、名前知ってるなんて、ずるい。教えてよ」
仕方なく、俺は答えた。
「や、夜白晴也……です……」
「何かしこまってんの。タメ口でいいよ。あ、私の方が敬語じゃなきゃダメかな。命の恩人だもんね」
「いや、そんなことは……」
明月ほたるは、テレビで見たそのままだった。ゆったりとした紺のパーカーの上でセミロングの金髪がキラキラと輝いている。俺は、超有名人を前にして、しどろもどろになる。
「あの、ほたるさんは…………」
「ほたるでいいよ、晴夜くん」
「ほ、ほたるは何で……」
明月ほたるのペースに乗せられて、急激にタメ口になる俺。恥ずかしくて汗が吹き出す。
「何でここにいるか? もちろん、命の恩人の晴夜くんを探してたのよ」
俺はそこで思い出した。ほたるには能力を見られているはず。あの夜、俺は彼女の目の前でシャービルと戦った。
しかし、このあっけらかんとした様子をみるかぎり、もしかしたら俺の能力には気づいていないのかもしれない。「ひかり」の発動時には目をそらしていた、ということもあり得る。
どっちだ? それによっちゃ、まずいことになるかも……。
「一体、どこまで……」
「どこまで知ってるか? ううん全然知らない」
やっぱり。これなら大丈夫か……?
だが、ほたるはちょっと意地悪く微笑むと、こう続けた。
「晴夜くんが、すごい超能力を持っていることくらいしか」
「!」
俺は思わず息を呑む。やっぱり見られてた。
どうしよう……。他の人に話されたら、俺はまずい立場になるんじゃ? この世界では、この能力は特殊すぎる。
「心配しないで。誰にも言ってないし、言わない」
ほたるは言った。
「その代わり……」
「その代わり?」
「お友達になってくれる?」
「へ?」
俺が呆気にとられていると、ほたるはこう続けた。
「私、あんまり友達っていないのよね。ほらこんな仕事してるでしょ。友達作ってる暇なくって」
「はあ。しかし」
「友達になってくれないと、言っちゃうかもー。超・能・力、のこと」
「いや、そ、それは、あの、その」
俺がへどもどしていると、そのとき、光るものが視界に入った。ポーティが俺の後ろから飛び出してきたのだ。
「ばれてるなら、話が早いわ」
今度は、ほたるが呆気にとられる番だった。
「わっ、な、何?」
「どうも、ポーティよ」
ポーティはそう自己紹介した。そしてほたるの目の前で、ホバリングしながらお辞儀する。
まずいなあ。妖精まで出てきた日にゃ……。
俺は、はらはらとほたるを見つめた。一体どんな反応を示すだろうか? 急に妖精が見えたりしたら、自分の正気を疑うんじゃないか。俺の場合、何日もかけて夢の中で慣れていったからよかったものの……と考える。
もしいきなりだったら、取り乱して、病院に駆け込んだかも。
しかし、しばらくぽかん、とポーティを見つめていたほたるは、我にかえると、嬉しそうにこう叫んだ。
「妖精さんだ!」




