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24.サーチ

 俺は公園のベンチに腰掛け、ポーティから説明を受けていた。ポーティは俺の頭の上を飛びまわりながら異世界で起こったことを話した。


「あのあと何週間かしてから、別の魔王が現れたの」


 何週間? まだあれから数日しか……ああ、そうか、こっちとは時間の流れが違うんだった。……え、まてよ? 今なんて言った?


「別の魔王!?」

「それは、前のとは比較にならない魔力を持っていたわ」


 何だって! 俺は立ち上がって尋ねた。


「大丈夫なのか、街は、お前の国は?」

「ええ、何とか。っていうか、魔王は現れるなり、すぐどこかへ消えちゃったの。どこへ行ったんだろう、と思ってた」

「ま、まさか……」

「うん。多分こっちに来てるわ」


 何てこった。新しい魔王がこの世界に来てるだって?

 俺は、またベンチに座りなおして、両手を組んだ。手が汗ばんでいるのがわかる。比較にならない魔力……。おそらくは、シャービルが束になってもかなわないくらい。おそらくは、俺が束になっても。


「なあ、それって、俺が狙いなのか」

「最初は、そうだったと思う。あなたを追って、こっちへ来たんじゃないかな」

「やっぱりそうか」

「でも、それにしては、攻撃が手ぬるいわね」

「手ぬるい?」

「シャービルの軍団を差し向けてもいいわけだし、魔王本人がやってきてもいいわけだし」


 俺はぞっとした。シャービルの軍団? 魔王本人だって? 確かに向こうは、本気をだせば、それくらいできるわけだ。俺のことなんて、いつでも縊り殺すことができた。そう思うと、鼓動が激しくなる。

 けれど、それなら何故、今俺は生きていられるのだろう。


「じゃあ、どうして?」

「興味が他に移ったんじゃないかな」

「それは一体何だ、ポーティ」


 するとポーティは、すごく言いにくそうにこう言った。


「この世界」




「何てこった」


 俺は頭を文字通り抱えた。


「今度はこっちの世界を征服だなんて……」

「ごめんなさい」

「お前のせいじゃないよ」

「でも、私がセイヤに助けを求めなければ……」

「そうしなきゃ、国が滅んでたんだろ」

「そうだけど……」


 ポーティは消え入りそうな声で言った。


「そんなことは、もういいよ」


 俺は決断を迫られていた。それは大きな決断。命が賭かった決断。いや、賭けられているのは、もっと大きなものかも。

 魔王と戦うか、否か。

 戦いたくない。正直に言えば戦いたくない。でも、魔王はこの世界を狙っている。誰かがやらないと、世界が滅ぶかも。

 だめだ、とても、そんなこと決められない。


「ところで、ランプはどうした?」


 ふと思いついて、俺はポーティに尋ねた。


「え?」

「ランプだよランプ。魔王を探すことができるランプ」


 俺は、あっちの世界に行ったときに使ったランプのことを思い出していた。あれは、魔力の出所をサーチするアイテムだ。


「……ランプはこっちに持ってこられない」

「えっ」

「あれは特別な道具で、別の世界へは、持ち出せないの」

「持ち出したらどうなる?」

「粉々に砕け散ると思うわ」


 俺は肩をすくめた。


「ランプなしじゃ、どっちにしろ魔王は見つけられないな」


 俺が安心したような、がっかりしたような、複雑な気持ちでいると、


「これは伝説だけど……」


 ポーティは、言った。


「この世の中には、あのランプと同等の能力を持った人間がいるらしいわ」

「どういうこと?」

「つまり、サーチ能力を持った人間」

「サーチ能力を持った人間? そんなのがいるのか」


 魔王にたどり着く手がかりが見つかってしまい、俺の心拍数は上がる。本当は、魔王なんて見つからない方がいいような気がしてならない。

 あれ、でもまてよ。俺はまた考え込む。


「……だけど、どうやってその人間を見つける?」


 するとポーティはこう言った。


「私がどうやってあなたを見つけたか知ってる?」

「え?」


 そう言えば、確かに。ポーティは、ある日突然、俺の夢の中に現れ、「あなたには『ひかり』を操る力がある」と言ったのだった。


「私には、能力者を見分ける力があるの」

「なるほど……」


 さっきからがっかりと安心が交互にやってきて、心臓が痛くなってきた。俺はもう、どっちが自分の望みかわからなかった。


「だから。きっとサーチ能力のある人間を見つけてみせる。どれだけ時間がかかるかわからないけれど、だってそれが世界を救うためだもの」

「そうか、じゃあ頼むよ。見つけたら教えてくれ」


 ポーティには俺が本当に望んでいるように聞こえただろうか?


「うん、私に任せて。必ず……をっ」

「をっ?」


 ポーティが公園の入り口を指さしてこう言った。


「能力者、見っけ」

「ええ?!」


 ポーティは俺の後ろに飛びすさった。妖精が隠れるのと同時に入り口から人影が現れる。


「あっ」


 現れたのは、歌手の明月ほたるだった。金髪が、夜の街灯に光っている。明月ほたるは、俺の顔を見るなりこう言った。


「命の恩人、見っけ」



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JK転生物語 ~死んだらネコと合体してた~
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