2.敵
改めて見ても、それはグロテスクとしかいいようのない生き物だった。
眼球がまるで何かに驚いているかのように飛び出し、不格好に歪んだ唇からは、乱数を使って生成したようなランダムな歯がギラギラと覗いている。
一応、四本足で立ってはいるが、全身うろこに覆われたそれは、俺には深海魚が連想されてならなかった。それもとびっきり不細工なやつだ。
「おい、ポーティ」
俺は逃げ出したい気持ちを必死でおさえこみながら言った。
「もっとマシな見た目の奴、いなかったのか?」
「仕方ないでしょ。これがあなたの戦う相手なの。私たちの国ではシャービルって呼ばれているわ」
何だか知らないけれど、とにかく早く倒してしまおう。
俺は「ひかり」を敵めがけて真っ直ぐ飛ばした。……が。
「避けた?」
シャービルは、正に魚を思わせる動きで、横へ跳ねた。そのまま向きを変えたかと思うと、こちらへ向かって突進してきた。
「あぶない、セイヤ!」
俺はとっさに「ひかり」を8の字に回して体の周りに張り巡らせる。シャービルは、また飛び退いて、距離をとった。こちらを睨みながら、その歯を涎で光らせている。
(噛まれたら、痛いだろうな……)
俺は、できればもうこの夢から覚めてしまいたかった。しかし、再び夢で惨めに負けるのは癪だ。
「ポーティ、どうすればいい?」
俺は静かに尋ねた。
「アイツ、避けるぞ」
ポーティは、俺の耳元に寄ってきて答えた。
「連続攻撃よ。奴の動きに先回りして合わせるの」
「合わせろって……簡単に言うよ」
そんなことを言っている間に、シャービルが襲い掛かってくる。俺は、やけくそになって連撃をかました。