15.神殿
神殿はかなりの大きさだった。ちょっとした博物館くらいあるだろうか。
石でできているらしいその神殿は、ギリシャ神話なんかによく出てくるそれと似ていなくもなかった。何十本もの円柱が石の天井を支え、青空をバックに佇む様は、半壊してるとはいえ壮観だった。
「すごいな」
「静かに」
妖精に言われて、俺は口をつぐみ、そうっと歩を進める。石畳の所々から、雑草が顔をのぞかせている。長年、人の手が入っていない様子だった。一体、何年前に作られたものなんだろう。
俺は、息を殺して神殿内に足を踏み入れた。
神殿には、棺が多数安置されていた。その棺も、石でできているようだ。数はそう、百以上もあるだろうか。
「全部、遺体?」
小声で尋ねる。
「そう、古代人のね」
ずらり、と床に並んでいるそれらからは、何だか冷たい蒸気が立ち上っているような気がした。古代に亡くなった人々の魂。その残滓がまだ残っているかのように。
俺が棺に目を奪われていると、突然、ずしんと地響きがした。目を上げて、俺は卒倒しそうになった。
それは岩の化け物だった。
とにかくでかい。十メートル以上はある。そして全身がごつごつした岩で覆われていた。遠目に見た時には、向こうのほうの岩山と重なって、気づかなかったのだ。
一応、人の形はしているが、こんなのが生きて動いているなんて……とても信じられない。
「こいつが……」
俺が口にしかけたとき、その化け物が拳を振りかぶる。
横っ飛びに跳んで、何とか避けた。しかし、打ち下ろされたその拳の衝撃で吹っ飛ばされる。なんてパワーだ。
起き上がると、棺が見るも無惨に破壊されていた。パラパラと周りに石くずの落ちる音がする。
「こいつが魔王なのか?」
「たぶん!」
多分かよ。俺は、愚痴りながら駆け出した。とにかく距離を取らないと。あんなのを食らったら、ひとたまりもない。
しかし岩の化け物は、図体の割に動きが速かった。




