第九話 夏祭りはフラグ?
俺はグダグダとした夏休みを送っていたが――
強制イベントが発生した。俺は柊に夏祭りに一緒に行かないか誘われているのだ。
俺は妹を除いて女子と二人っきりで遊びに出かけたことがなくとても困惑している!男子とも遊んだことないけど。
でもこのフラグが立ちそうな強制イベントを断れるほどコミュ力が無いし断る理由が無い。うーん……どうしよう。
双葉も連れていけばいいんじゃないか!?これなら俺も動揺することなく夏祭りに行ける?
「なぁ双葉。今度柊と夏祭りに行くんだけどついてこないか?」
「えっお兄ちゃん嘘でしょ……ここまでお兄ちゃんが鈍感だったとは双葉悲しいよ」
「鈍感??」
「そうだよ。柊さんってのはこの前お兄ちゃんに勉強を教えていた人でしょ?それはデートのお誘いだよ。デートに妹を連れていく馬鹿がどこにいるの?あ、お兄ちゃん馬鹿だったよね」
「これでも恋愛シミュレーションゲームはやっているんだぞ?」
「でもお兄ちゃんはリ・ア・ルの恋愛経験ゼロでしょ?だから乙女心がわからないんだよ」
「じゃあどうすればいいんだよ!」
というわけで俺は双葉が作ってくれたメモに書かれている通りに動けばいいって言っていたけど内容がちょっと。
――『夏祭り』行動
一、柊と手を繋ぐ
二、屋台でご飯を買って食べさせあう
三、ヤンキーにつるまれて俺が助ける
四、柊に抱き着いてキスをする!
これだぞ?項目三とか絶対無理だし。項目四は恋人同士でするものだろ。
俺と柊ってこんなに関係が親密じゃないし。結局アドリブになるじゃないか。
もう俺の夏、終わったな……
そして俺は何も計画を立てないまま夏祭りを迎えてしまった。
俺達は駅前で待ち合わせをしている。俺が駅前に着いた時には柊は浴衣姿で待っていた。
柊の浴衣姿はとても似合っていて惚れそうになった俺がいる。あいつは馬鹿にされているがスタイルはいいし顔も可愛かった。
「どうかな?」
「えっ!?あ、うん。似合っていると思うよ……」
ヤバい!?初っ端からコミュ障発動すんなよ!完全に変な奴じゃないか。
「ありがとう……じゃあ電車に乗ろうか?」
うわぁ超気まずい。恋愛経験ゼロの俺に夏祭りはハードルが高すぎたのかもな。
とはいえ後戻りはできない。ここは双葉の持っていた少女漫画を読みまくった俺の力を発揮するか。でもあんなイケボが言いそうなきざなセリフとか言えねーよ!
電車の中は浴衣を着ている人たちが多く大体の人が夏祭りに向かっていることがわかる。
俺はなんとなく柊を見ると柊が俺の裾をつかんでいた。俺は変な冷汗が出て心臓の鼓動が止まらなかった。どうしようもしかしてマジで俺のラブコメ展開来たのか!?
会場に着くと人が多く迷子になってしまいそうだ。
「人も多いし手、つなごっか?」
「いいの??」
「うん!迷子になると大変だからね」
そう言って柊は俺の手を握った。ん?それって俺が馬鹿で迷子になりそうだから仕方なくってことか!?
ていうかどうしよう手汗ヤバいかも……このままじゃ気持ち悪がられてしまう。初めてできた友達なのにこんなところで終わりたくない!落ち着くんだ……俺はただ手を握っているだけだ。
「まず何処から回る?柊は行きたい場所とかある?」
よし!今回は普通に話せた。この調子でいけば問題なく終われる!
「うーん……リンゴ飴、焼きそば、イカ焼き、かき氷、わたあめかしら?」
「おいおい全部食い物じゃないか……」
「し、しょうがないじゃない!峰岸君と夏祭りに行くのが楽しみでご飯を食べられなかったんだもん!」
えっ?ちょっと謎なんだけど……そういう発言が一歩間違えれば大変なことになるんですから。というか生徒会長さんさっきから意味深な発言や行動多すぎませんか!?
柊の発言も怖いがこの夏祭りで一番怖いのは知り合いに会うことだ。俺と柊が一緒に夏祭りに来ているなんて知られたら学校で晒されるに決まっている。ここは目立たずに――
「あれ?師匠じゃん!柊と何しているの?」
流石フラグ回収のプロ!考えた瞬間辻に会うなんて神技過ぎでしょ!?俺ってフラグ回収の人間国宝にしてほしいね!
「デートかしら?」
ちょっと柊さん?なんでばらしちゃっているんですか??普通に考えたらそこは誤魔化すところだよね??あなたの馬鹿真面目も人間国宝級なんじゃないですか!?
「辻!勘違いするなよ?これはデートと言っても恋人がするようなデートじゃなくて友達デートなんだよ!つまりただ二人で遊んでいただけってことだよ!!」
「なるほど!そういうことだったのか」
やっぱり辻は超単純。単純な子大好き!
俺達は結局、辻と屋台を回ることになった。はぁ運が良いのか悪いのか……
幸いにも辻だったからよかったけど。
「腹減っているんだろ?早く行こうぜ」
俺達はご飯を食べたり射的や金魚すくいをしたりと結構満喫できた。しかし夏と言っても外はもう暗かったので帰ることになった。
「そういえば辻はどうやって来たんだ?一人だと危ないしよかったら送ってくぞ?」
「親に連れてきてもらったし帰りも迎えが来るから大丈夫!」
「じゃあ俺達も帰るか?」
「うん!」
「あ、そういえば俺って柊の家知らないわ」
「駅まで送ってくれれば十分だよ」
「でも結構暗いし一人だと危ないぞ??」
「それじゃあお言葉に甘えて……でも家は駅からそんなに遠くないから峰岸君が家に帰るのが遠くなるってことは無いと思うから安心して」
俺は柊の家に着くと柊が送ってくれたお礼として家で休憩させてもらうことになった。
柊の家には誰もいないらしく完璧シチュエーション過ぎて緊張してきた。
だってこのまま行くと……
「お茶持ってきたよ。わざわざ送ってきてくれてありがとね」
「いやそれはいいんだけど意外と部屋が乙女で驚いた」
「それは皮肉かしら?」
「もっと参考書とかがずらーっと並べられてぬいぐるみとかあるわけないって部屋を想像していたから」
「私だって女の子なんだから可愛いものとか好きなんだから!周りには勉強とかにしか興味ないと結構思われていそうだけどラノベとかマンガも読むし恋愛だってしたいと思っているんだよ?」
柊は俺と同じで固定概念でキャラ設定されていて辛い人生を送っていたのかもしれない。誰かには素を見てもらいたいっていうのは俺も思う。俺と彼女は方向が違ったとしても馬鹿であり似ているのかもしれない。そういえば子供のころにも同じ馬鹿として仲良かった女の子がいたな。
俺は家に帰るともちろん双葉に夏祭りがどうだったか聞かれた。
どうもこうも無いんだが……でも柊とは関係が深くなったのは確かだと思う。俺自身で思っていることなんだけど。