第三話 ゲームで友情
次の日。帰宅部の俺は朝練など気にせずにのんびりと登校できるはずなのだが柊の命令によって俺は朝早くから学校というダンジョンに行くことになった。朝早くから登校して何をするつもりなんだ?生徒会室でラジオ体操でも毎朝やらされるのか?もしかしたらこの生徒会は健康を意識しているのか!?散歩もあったし。健康は大事だよな。
俺は生徒会室に着くと颯爽と扉を開けた。
生徒会室には俺が見ている限り昨日はずっと寝ていた辻が朝早くから一人で黙々とゲームをやっていた。目の周りが隈だらけの辻を見て察しるに生徒会室に来る前からもゲームをやっていたのだろう。昨日も徹夜でゲームしていたから寝ていたのかな?
というか生徒会室にテレビゲームなんて持ち込んでもいいのだろうか。でも何も言われていないということは大丈夫なのだろう。
「あの――」
「あんた誰?」
昨日は寝ていて俺の顔を知らないのはわかるが第一声が「あんた誰?」だと軽く傷付く。
俺は自分のことを説明して辻の理解を得た。しかしどう見ても生徒会役員をやるような柄ではなかった。どちらかといえば正反対で生徒会に入った経緯が俺には謎だった。
俺もだけど……
「なんで辻は書記をやっているんだ?生徒会とかとは無縁そうなキャラなのに」
「んー……何か私、パソコンゲームをよくやっているんだけどそのおかげでキーボードを打つのが早くてクソ教師に書記が向いているからやれって言われたからー。あと内申点もくれるって言っていたし」
どうやら辻は柊のような自ら生徒会長に立候補するような馬鹿真面目ではないようだ。
本気で学校を変えたいなんて思って生徒会に入る奴なんていないだろ。
「それで何の用だったの?」
「あ、ごめん。柊はまだ来てなかったのかなーって?」
「あいつは風邪引いたらしくて病院に行ってから来るって言っていた。柊もホント馬鹿真面目だよなー。風邪引いたなら適当に理由付けてサボればいいのに……」
たしかにそうだけどここは中学じゃなくて高校だからじゃないか?1日でも休むと結構成績とか気になるじゃん?俺だったらサボっていると思うけど……
でも友達がいたり欲を言えば彼女とか?いればリア充しているし少しは頑張ろうってやる気が出るんだろうな。俺の場合は彼女どころか友達もいないからアドレナリンが足りてなくてやる気が出ないし。
俺のアドレナリンは妹ぐらいかな?効き目抜群だぞ。妹というアドレナリンが無ければ俺はヒキニートになるだろうし。
――生徒会室に予鈴が鳴り響いた。
「あ、予鈴だ。辻はまだ戻らないのか?」
「これクリアしたら行くつもり――」
やはり彼女は書記には見えない。というかマイペース過ぎないか?下手したら遅刻にされるぞ。成績とか気にならないのだろうか?俺だったら気になっ――うーん少しは気になると思うよ?多分……
俺は午前の授業に出ていつも通り寝ようかと思っていたが辻を思い出すと退学になりそうでしっかりと授業を受けることにした。まさに反面教師だな……
後で辻に事の重大さを教えてやろう。
昼休みは俺と辻でおにぎり片手に校内パトロールをすることになった。なんで柊がいないのに校内パトロールをするかだって?そんなのいつ帰ってくるかわからないからだよ。
もし昼休みに俺と辻が生徒会室でゲームなんてしているところを見られたら説教タイムの始まりだぞ?
しかし何というかわかっていたんだけど相手が辻だとかなりサボり気味でほとんど散歩で困っている生徒が居ても「自分で何とかしろ」の1点張りで酷かった。
「暇だしゲームしない?」
「柊に怒られても知らないぞ……でもちゃんと校内はパトロールしたしいいよね?」
「そうだそうだ!」
そして俺達は生徒会室でゲームをすることになった。辻は二十個ほどゲームのソフトを生徒会室に持ち込んでおりジャンルも沢山あり充実していた。ホントにこれ大丈夫?校則に引っかかってそうだけど何も言われてないって言うことはいいよね?
俺達は色々ゲームをやっていたが辻が得意とする格ゲーで勝負することになった。
しかし辻はたしかに強かったが俺も格ゲーは得意だった為、辻との勝負に勝った。
「なんで!?私が負けたの??」
「俺ってぼっちだから家でいつもゲームばっかりやってて、特に格ゲーとロープレは得意なジャンルなんだよね」
すると辻は――
「か、かっこいい!!」
「え?」
「凄かった!今日から峰岸のことは師匠って呼ぶ!
辻は意外にも単純なようだ。でもそこまで凄くも無いよね?だってまだ一回戦っただけだよ?
俺はこの格ゲーの勝負によって辻との友情が芽生えたのかもしれない。そして友情の証として?生徒会室で午後の授業をサボり、放課後まで二人でゲームをしていた俺達だった。なんかわからないけど生徒会って楽しい!!
しかし事件は起きた――
「あなた達何やっているの?」
なんと柊が帰ってきたのだ。このままでは説教を受けることになる!
「師匠!こっち」
しかし辻は説教から逃げるのは慣れていたらしく俺は辻と一緒に鞄を持って家に帰った。
でも次、学校に行ったときに説教が悪化してそうだな……