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『バカ』な彼と真面目な彼女の生徒会!  作者: 丈槍 京
第三章 『イベント』連鎖
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第十六話 体育祭には興味ありません―後編

 体育祭前日に、俺と辻はテルテル坊主を逆さに吊るして雨が降ることを祈ったが体育祭当日はこれでもかというくらいの快晴だった。とはいえ出場競技を減らすことに成功した俺はそこまで疲れないと思う。

俺が出る競技って言ったらクラス全員参加のよくわからない競技ぐらいだからな。でも生徒会長は開会式で全校に話をしなくちゃいけないという試練が待っているらしい。

こうやって目立つことによって憧れの先輩となり後輩の女子とかが寄ってくれそうだしマイナスよりプラスが多いからいいよな。俺は話さないけど。

しかし数分後。俺はさっき言ったことをすべて撤回したい。何故なら開会式が始まって柊が話すと生徒だけではなく教師にまで指を指されて笑われたのだ。しかも柊だけではなく俺達まで。とばっちり酷すぎるだろ!

さっきは「スポーツマンシップにのっとり――」とか言っていたけどお前らのスポーツマンシップは人を指で指して笑うことか?もしそうなら全国のスポーツマンに謝れ!


 俺達は生徒会用のテントで座って観戦していたが終わった後の片付けを考えるとため息しか出なかった。

「なぁ……面白いか?」

 俺はあまりにもつまらなくて柊たちと雑談をして気を紛らわせることにした。

「体育祭って面白いものなのか?」

「たしかにその通りだな。別に面白いものではないよな」

「……なんで峰岸君と辻はそんなに死んだような顔をしているのよ?」

「ただ暑いだけのこの状況じゃこうなるだろ……」

「そう?応援とかしていたら面白くないかしら??」

 嘘だろ!?アンチを応援するとかどれだけ馬鹿真面目なんだよ……もう馬鹿真面目って言うよりもただのお人好しだな。もう俺は早く家に帰って寝たい。

「もう体調悪いから帰っていいか?」

「女の子を置いて片付けさせるのかしら?」

 こいつ俺の弱いところを突いてやがる。そんなことを言われたら帰れないに決まっているだろ。体育祭なんて誰得だよ。

 「なんか大丈夫そうになったからもう少し頑張りますわ」


 俺は唯一のクラス競技を終えて生徒会室で昼食を食べることになった。

「私、沢山お当作ってきたんだけどみんなで食べない?」

「……いいのか?」

「う、うん!みんなの為に作ってきたやつだから遠慮せずに食べて」

 柊が作ってきたという弁当は重箱に入っていて色々な種類のサンドイッチが沢山あり、とても豪華だった。多分俺でもこんなに凄い料理は作れないだろう。こういう形で柊の手作り料理を食べたことは初めての気がする。

生徒会役員は朝早くから登校しなければならなかった。その為、俺は朝ごはんも食べずに弁当を作っていて空腹で死にそうだった。柊も生徒会役員だから時間も無いはずなのに俺達の為にこの量を作るのは優しさと言えるだろう。

 俺は生唾を飲み込み、柊の手作りサンドイッチを食べた。

「どう……かな?上手く作れたとは思うんだけど……」

「……美味い!」

 そこらのコンビニで売っているサンドイッチなんかより比べ物にならないくらい美味しかった。空腹ということもあったが次から次へと口に運んだ。

「こんな美味い料理が毎日食えたら幸せだろうな……」

 俺は無意識にそうつぶやくと――

「じゃあ峰岸君の為にお弁当作ってこようか?」

「……えっ」

「聞こえなかったの?私が毎日お弁当を作ろうか?って言ったの!……もう、何度も言わせないでよ……」

「でも毎日、二人分の弁当を作るのは大変じゃないか?」

「今日みたいな料理は無理だけど普通のお弁当なら二人分くらいなら簡単だよ?」

 柊は優しく笑み浮かべて顔を傾けた。俺は柊の乙女チックな行動に一瞬ドキッとしてしまった。

「それじゃあ……頼もうかな?――でも無理はしなくていいから!!」

「うん!」

「あの――イチャイチャしているところ申し訳ありませんが見ているこっちが恥ずかしいんですけど?」

 俺達は辻達がいることを忘れていて話していたが我に返ると顔が真っ赤になった。何で俺達は初々しいカップルみたいなことをしていたんだ!?暑さで脳がやられたか?

「もう気にするな!時間も無いしさっさと食うぞ!」


 俺は慌てて持っていたサンドイッチを食べ、早歩きで生徒会室を去った。

昼休みがまだ余っていた為、外にはまだ人は少なかった。俺は一人で何もすることも無かった為、テントの椅子に腰かけてうたたねをしていた。

 しかししばらくすると――

「さっきお茶飲んでなかったでしょ?水分補給をしっかりとらないと脱水症状になっちゃうよ?」

 柊はそう言ってペットボトルのお茶を俺に渡した。

「あ、ありがとう」

「そうだ!さっきモモちゃん先生が生徒達にテントを片付けるよう頼んだらしいから私達はそのまま帰っていいらしいわよ?」

「本当か!?」

「あ、でもあえて私達も手伝ったほうがポイント高いかも?」

「ポイントより休みが欲しい」

「そ、そうね」


 というわけで俺達は午後のプログラムも午前同様、たわいもない雑談をして暇をつぶしていた。柊達の出る競技は応援したけど。

 夕方になると西日が眩しく、俺は目をつぶりうとうとしていた。俺が起きたころには閉会式が始まっていたが生徒会役員の為、立ちながらつまらない校長の話を聞かされずに済んだ。これは最高の特権だよな?

 閉会式でも生徒会長である柊が話していたが結局、笑われた。何がそんなに面白いんだよ。俺は校長の頭に西日が射し込んで光り輝いていた校長の方がずっと笑えたぞ?神様のようだったな。……あーこういう事、考えているから馬鹿にされるんだ。

 モモちゃん先生のおかげで俺達を除く生徒達は体育祭の後片付けをさせられている為、歩いていても誰にもすれ違わなかった。俺は心の中で「アンチよ。ザマー見ろと」思う。


 家に帰ると汗だくの体が気持ち悪く速攻でシャワーを浴びた。そして昨日の準備と体育祭の脱力感で疲れが肩に重くのしかかった。筋肉痛と共に――

 俺は改めて思った。体育祭って誰得だよ!!



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