星をつかむ人
夜空にきらきら輝くのは、遠くの宇宙の燃える光。遙か昔のその光が、今ここに降り注ぐ。
僕は手を伸ばして、つかもうとするけれど、開くとそこには何もない。
真っ白な紙に、真っ黒な絵の具を撒き散らす。黒く染まったその紙に、黄色で星を描いた。
光を無数に描いた。
黄色の絵の具が減ってゆく。僕は手を止めることが出来なかった。もしかしたら、その星がつかめるかもしれないと思ったからだ。
無数に散らばった、紙面の星は、僕にはつかめない。
僕は気がついた、星は簡単には描けない。僕が求めているのはこんな地面にあるものじゃない。
僕が見下ろしているものじゃない。
黄色い絵の具のチューブを僕は見つめた。
それをゆっくりと、他のチューブ並ぶ絵の具入れに戻す。色が順番に並んでいて、虹を作っていた。
僕は外に出た。
まだ昼間で、太陽の光が星を打ち消してしまった。大きな光は小さな光を飲み込んだ。僕には小さな光が見えない。星が見えない。
でも夜になれば、また見える。
昼とは違う夜の世界。
見方が変われば、輝きが現れる。人々が見過ごしている、大きな光に隠れてしまう、そんな彼らを見つけることが出来る。
だから、僕は思う。
僕は星をつかもう。いくつもの星をつかもう。
それが、太陽への、いっぽ。
星をつかむ人
>Do you like yellow?
誰にも見えない、その一歩。
踏み出すのは、だれだ。
2015/5 秋桜空