問:白くなると同時に黒くもなり、あるものは赤くなる。これは何か。簡潔に述べよ。 (配点:20)
部活を休まなくてはいけない時期になってしまった。強制的に何も出来なくなってしまうのがこの時期。鬱憤を晴らそうと思ってもそれを許してくれないのが現実。別に遊んでも構わない。だが、それはリスクを負うのだ。それを知っていてもゲームを進める手が止まらないのは、仕方がない。
そんな俺はどうだろう。
ぶっちゃけて言えばそれ程成績は良くない。たいていが前日の夜からオールである。詰め込み型の典型タイプだ。
そしてそれは全く身にならない。一夜で覚えたそれらは、残念な事に寿命が短い。
教師が黒板に文字と数字を規則にのっとって並べていく。俺はそれを何の感情も持たぬまま書き写した。
……何にも考えていないとは言っていない。一応問題は考えているつもりだ。
数学は何故あるのかそれを考える時もある。
そういった時はたいてい解らない問題にぶち当たったときだ。解けないと自分ではなく数学そのものにあたってしまう。数学自体は悪くない。本当に。俺がちゃんと話を聞けばいいだけだ。
数学がなければ、この世に数字はないし、金銭のやりとりも難しくなる。数字がなければ世界はどうなっていただろうか。
それに、新幹線の座席数、道路にあるマンホールにだって数学が隠れている。
教師がそのように言ったのを覚えている。
……考えが逸れた。まずは目先のテストを何とかしなければいけない。頭では分かっているのに、動くのはなかなか難しい。
「ここ、テスト出すからな。問の5と6やっておけよー」
今先生何つった?
これであってる?
げ、これかよ。まじでか。
これくらいならいけるんじゃない?
後で答え合わせよー。
教室内がザワザワする。
みんな必死なのだ。良い点取れば、親からも教師からも誉められる事はあってもとやかく言われる事はない。実に良い事だ。
周りは頑張っているな、と思いつつ、問5と6にペンで丸を付けた。
閉じそうになる瞼を必死に堪えながら、ノートにひたすら書き写しているうちに授業は終わり、ホームルームの時間になる。
部活はテスト期間のために禁止させられている。それはある者にとって不幸であり、ある者にとって幸福である。俺はどちらかというと前者だ。先に言ったように鬱憤晴らしが部活なのだ。
「なー梶井。帰りに家で勉強しねぇ?」
鞄に溜込んでいた教科書を入れている最中、前の席の関が後ろを振り向いた。
「テスト前日友達の家で勉強なんて、遊ぶフラグだろ」
俺は経験上そう語る。
テスト期間に友達の家で勉強は良い方向に進めば良い勉強会になる。だが、この行為はハイリスクハイリターン。友達の家にある漫画やゲームに目がいき、ちょっとだけなら、と思ったらそこでアウト。
「さすがに前日は遊ばねぇだろ。数学教えてやるからさ」
「これは魅力的ですな。関和孝どのに数学を教えていただけるなんて……!」
「……お前、来る気あんのかよ」
俺は大きく首を横に振った。
「俺は家で勉強するよ。俺のペースでしたいし。母さんのレモネードでないと俺は駄目なのさ」
「……へいへい。じゃあ、今村と高原だけでいいか」
今村と高原って、そう思い関を見る。
「数学3強が揃ってどうするんだ」
「まあ、どうにかなるさ」
ケラケラ笑いながら関は言ったが、数学好きだったら国語好きな得意な福澤とか、平塚とかと一緒に勉強すればいいと俺は考えるのだが。
かく言う俺も国語は好きだ。仮に俺も行くとなっていれば、文系と理系の割合は1:3。……それでも、アンバランスだと思うぞ、関。
先生が来た頃、会話も終了となった。
家に帰ってここからが勝負とばかりに張り切、ろうとする。机の上に置かれたレモネードをゴクリと飲みながら窓の外をぼーっと見る。
……ああ、いい天気だなぁ。
……って、そんなことしている場合じゃない。
俺は机の上にノートと教科書を広げる。明日の教科は英語、理科(化学)、数学の3つ。
この教科の配当誰が決めたのか。後半2つに理系を入れてくるとは相当苦しめたいのか。
英語は他2教科より何とかなるので、いったん置いといて、化学に取り組む。
モルやら何やら。計算問題もあるなんて、ほぼ数学じゃないか、と叫びたくなる気持ちを押さえつつ重要単語を100円ショップの落書き帳に殴り書きする。
何かで聞いたことがある青のペンでひたすら重要単語だけを書き写していく。青のペンが良いと言われれば、それを信じてしまうほど記憶力は欲しいのだ。
化学もちゃんとやれば楽しいのだろう。俺も実験は好きだった。指示薬で色が変わる水溶液や再結晶。顕微鏡を用いた気孔の観察は楽しい。
最早、全部実験にしてほしい。
ある程度良いだろうと思うところで教科をチェンジ。
強敵である数学のお出ましだ。数学で大事な事は公式を覚え、それをいかに問題に当てはめて使えるかどうかだ。
と、言うことであるので、公式を例の如く青ペンで書く。書く、書く、書く、書く、書き殴る!
あとは、先生の言った、ここ出るぞ、な問題を解いていく。とりあえず先生が言ったものだけを解いていく。だからいくら眠くても授業は寝てはいられない。
途中で何度か母親が自分を呼んだ気がしたが、そんな場合ではない。今はひたすら頭にたたき込まなければいけないのだ。
そんなことをしている間に時間がそれなりに過ぎている様な気がした。
これだけ頑張ったのだからとりあえず小休止というのも兼ねて、お風呂に行こうと立ち上がった。
そして、椅子から転げ落ちる。
え。
夕方にしては明るい。
……。
落ち着け自分。
時計を恐る恐る見ると、5:30。午後だといいなと思ったが、それは都合のいい話だ。
これは午前5:30。
目の前に広げてある落書き帳は真っ白だった。
机の上にある、問いが並んだ紙。
俺の頭はもちろん真っ白。
お先は真っ暗。
戻るテストは、真っ赤っか。
何事も積み重ねが大事でしょう。
問:白くなると同時に黒くもなり、あるものは赤くなる。これは何か。簡潔に述べよ。 (配点:20)
>Do you like White,Black and Red?
テスト、学生にはついて回るものですよね(..;)
前回の白と黒は暗かったので明るめなコメディテイストにしました。
和算好きです。
2015/4 秋桜空