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詰みゲー!  作者: 甲斐柄ほたて
第四章 月、地平に沈む
97/141

4-10 ブリッジ

†††4-10


「こちらです」


ロベルト小尉がジョン、ミリア、ベンジャミンを洋館へと招き入れる。

入ったところは巨大な玄関ホールだった。ホールには扉が左右に三つずつに、正面には大きな階段があって二階へと続いていた。一階正面のさらに奥には中庭に出る大きな扉があった。


玄関しか見ていないが明らかにジョンが今までの人生で見た中で一番の豪邸だった。



「とりあえず応接室で詳しく説明をしましょう。こちらです」


ロベルトは右側の手前から三番目、つまり一番奥の扉を開け、廊下へと出た。廊下はかなり長く、右側には部屋への扉が、左側には窓がずらっと並んでいた。窓からは中庭が見えた。ジャングルばりに緑が生い茂った庭だった。

ロベルトが手前から二番目の扉を開ける。

ベンジャミン、ミリア、ジョンが続いて中に入った。


その部屋には大きなソファが四つ、テーブルを囲むように輪になって置いてあった。四人がそれぞれソファに腰掛けるとロベルト小尉が切り出した。


「さて、それでは説明を始めたいと思いますが、なにかご質問はおありですか?」

「いいかしら?」


ミリアが小さく手を挙げる。どうぞ、とロベルトは手を差し出した。


「どうしてわざわざここで説明を?さっきの兵舎でよかったのでは?」

「それは私の魔法に関係があります」

「この屋敷か?」

「はい、ベンジャミン中尉。『隠者の忍び屋敷ハイドアウトマンション』と言ってこの中では時間は外の六倍遅く流れます」

「えっと・・・・・・それは、」

「つまりここで半年過ごしても外では一月しか経っていない、ということだよ、ジョン君」

「なるほど」

「外界とは隔離されてるのね?」

「はい、完全に。ただ、正面玄関から出入りは可能です」

「わかったわ」

「・・・・・・質問は以上で?」


ロベルトは三人の顔を順に見て質問がもう無いことを確認した。


「では説明を始めます。中尉と小尉はご存じでしょうが戦線がグランドブリッジに移動するまであと一月か、もって二月です」

「そうだな。この調子で行くとな」

「ねえ、地図はある?ジョンにはグランドブリッジはわからないわよ」

「ちょっとお待ちを」

「ありがとう、ミリア」

「いえいえ、無知なジョン君を気遣っただけよ」

「・・・・・・無知で悪かったな」


ロベルトが立ち上がり、部屋の脇にいくつかある書類棚の中を探し始めた。

しばらくするとロベルトが、ありましたよ、と言って戻ってきてテーブルに地図を広げる。ロベルトが地図を止める文鎮を置く間にミリアが地図を指さす。


「見ての通りこの世界には大陸が三つあるわ。右からイーストリア、セントリア、ウェストリア。今いるのがイーストリアよ」


地図には大ざっぱに言って三つの団子が並んでいた。アフリカ大陸よりやや大きい楕円形の大陸が三つ、横に並んでいる。大小はあるがおおむね同じ大きさだ。


「ミリア、今は『屋敷マンション』の中だ。首都がイーストリアにある、だろ」

「細かいわよ、兄さん。で、イーストリアとセントリア、セントリアとウェストリアはそれぞれ微妙に陸続きになっているの。このつながっている部分が『大地の橋グランドブリッジ』よ」


ジョンは大陸同士は一見互いに離れているように見えて間に細い陸地が一本ずつあることを確認した。


「いいかな、ジョン君?このブリッジ戦はこの戦争における正に正念場なんだ。だから今後切り札に化けるかもしれない君が出るとすればここしかない」

「だからそれまでにジョンを鍛える、ということか?」

「その通りです、中尉。ジョン君はここでブリッジ戦が起きるまでの約一ヶ月、訓練を受けてもらいます」

「その限られた一ヶ月を有効に使うために、あなたが来たのか」

「そうだ、ジョン君。私の『屋敷』の中であれば六ヶ月の訓練を受けられる。これでもまだ足りないくらいだが、あらゆる手を尽くして君を育てる。覚悟したまえ」

「・・・・・・えっとそれでどうして私たちを連れて来たの?」


ミリアが自分と兄を交互に指さしてロベルトに尋ねる。


「どうもジョン君にとってできるだけ快適な環境で訓練を受けられるよう配慮した結果のようだ。この世界でもっとも親しい人間と言ったら君らだろ?」

「まあ、そうね」

「しばらくしてジョン君がここに慣れれば出ていってもいいだろう。別に強制ではないので」

「了解した」

「申し訳ない。とにかく、ジョン君にはすぐにでも訓練を始めてもらいたい。今すぐにでも」

「俺なら大丈夫です。今すぐでも」

「よし。・・・・・・よろしければみなさんもどうぞ。紹介したいお方がいます。ジョン君の教官に当たる方です」

「どなただ?」

「シャープ・ペンシル准将です」

「えぇっ!?」


ベンジャミンは驚いてどこからか変な声を出した。ミリアは口に手を当ててベンジャミンのように声を出さないようにしていた。


「ペンシル准将が?今は『橋』にいるはずではなかったのか?」

「エストラルト中佐が頼み込んだそうです」

「・・・・・・」

「閣下をもう随分お待たせしています。お早く」

「そうか・・・・・・。わかった、早く行こう」


四人は部屋から出て中庭へと向かった。その途中でジョンがミリアに質問する。


「シャープペンシル准将って?誰なんだ?」

「まあ、一言で言うと英雄ね」


†††

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