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詰みゲー!  作者: 甲斐柄ほたて
第三章 狂った歯車は暴走を始める
85/141

3-47 魔術についての執事講釈

†††3-47


「・・・・・・あの町どうなるのかしらね」

宿屋に着くとお嬢様は、ばったんとベッドに倒れ込み、ぼそぼそと呟く。

「じきに軍隊が押し寄せてあいつらを始末するでしょう」

「そうだといいけどね」

「何か気がかりでも?」

「あなた、あの赤いのに軍隊が勝てると思う?」

お嬢様が起きあがりこちらを向く。

「『障壁』さえ砕ければ問題ないでしょう」

「『障壁』?」

「『障壁』は奴が纏っていた鎧です。お嬢様が槍で攻撃したときに奴の腹にヒビが入っていたのを見ましたか?あれが『障壁』です。身体全体を硬質の魔力で覆うことで鎧とする魔術で、戦闘時に魔術師がまず使用する魔法です」

「ふーん、硬質の魔力・・・・・・」

「このような具現化された魔力を『マテリアル』と呼称します。マテリアルには軟質なもの、弾性のあるもの、気体でも液体でも構いません。その物理性質は作り出す魔術師の意思、能力、経験に依存して発現します」

「ふうん・・・・・・。じゃあ、堅い『障壁』を持ってる奴ほど強い、ってことでいいの?」

「はい。まあ、一概には言えませんが、かなり重要な目安、と言えます」

「・・・・・・で、あいつは強いの?」

ベッドにうつ伏せに寝転がったまま、足をぱたぱたさせてお嬢様が尋ねる。

「強いですね。私が会った中で一番です」

「へえ・・・・・・。でもあなたがどのくらい強いかわからないのだけれど」

「そうでしたね・・・・・・。まあ、強くもなく、弱くもないってとこですね」

「どういうことよ?」

「魔術師には一般的に三つのランク付けが存在します。一つは 、無属性魔法が使えるかどうか。使えなければ普通の人です。魔術師かどうかの境目ですね。二つ目は属性魔法が使えるか。六つの属性のうち一つでも使うことができればこのランクになります」

「二つ目の方が上よね?」

「はい。一つ目をC級、二つ目をB級、三つ目をA級魔術師と呼びます。私はB級です」

「強くもなく、弱くもない・・・・・・か。なるほどね」

「三つ目は固有魔法・固有能力スキルが使えるかどうか。固有魔法は魔術師が一つだけ修得できる奥義です」

そこで私はちょっと説明を中断して、お嬢様をじっと見た。見ずにはいられなかった。ありえないことが一つある。

「ん?どーしたの?何か顔に付いてる?」

「お嬢様がさっき使っていたのが固有魔法です。『次元の門番』は明らかに固有魔法でした。『女王の雷槍』はわかりませんが・・・・・・。瞬間移動の魔法なんてそうそう使えないんですよ。だから・・・・・・」

「私はA級魔術師ってことね?」

「はい。ただ・・・・・・」

「ただ?」

「私がまだ修得していないことからもわかると思いますが、普通は固有魔法を獲得するのにかなりの時間がかかります。少なくともC、B級を経ることなくA級にいきなり昇格なんて私は聞いたことがなくて・・・・・・」

「記憶を失くす前の私はC級ですらなかったのよね?」

「はい。その通りです」

それを聞いてお嬢様は少し納得したような顔をした。

「やっぱりね。そうじゃないとおかしいものね」

お嬢様がなぜ納得したのか私には全く理解できなかった。当然だ。理解できるはずがない。

お嬢様の固有魔法に関係することだったからだ。

「え?それは一体どういう・・・・・・」

しかし、私がその答えを聞くのはもう少し後になる。

私の質問の途中で突然宿が揺れ始めたからだ。


†††

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