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詰みゲー!  作者: 甲斐柄ほたて
第一章 絶望する少年の運命は廻り始める
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1-11 ガラスの女神

†††1-11


俺は微妙にまずい何か黒い液体を飲むふりをして、少女の話を半分くらい聞きながら少女の顔を眺めていた。

「・・・・・・君、大丈夫?ぼうっとしてるけど」

「!!大丈夫大丈夫。ちょっと寝不足で」

「そう。ならいいけど」

少女は自分の分の飲み物をちびりと飲んだ。

今、俺と美人の魔女っ子さんは町のきったないカフェのテーブルに向かい合っている。

店には俺たちのほかには誰もいない。店主はカウンターの奥でおそらくは誰かが飲んだわけでもないコップをひたすら拭き続けていた。

「まずい茶ね・・・・・・。こほん、レジスタンスっていうのはね、世界中にいる魔物を片っ端から倒していく人の集まりよ」

とりあえずふんふんとうなずく。

「今ね、この町で才能のありそうな人を募ってるの。それであなたに出くわしたってわけ」

「へえ、レジスタンスって全部で何人くらいの人がいるの?」

「うちのグループには全部で数百人いるわ」

「ふうん、多いね」

「世の中には熱意のある人が多いのよ。戦況だってちょっとずつ良くなってきてるし」

「前に会った人はもうおしまいだ、みたいなこと言ってたけど?」

少女は一瞬詰まったがすぐに、最近変わったのよ、と言ってにっこりと笑った。


店主が次は皿を延々と磨くようになり、しばらく俺がレジスタンスについて更に説明を聞いた後で、少女は聞いた。

「ねえ。あなたはこのまま何もしないでいるの?それともあたしたちとこの世界のために戦いたい?」

そう望んでハンナと母親に見送られ山を下りてきたわけだが、いざ選択肢を目の前にぶら下げられると俺には即答できなかった。

「・・・・・・考えさせてくれないか。少しでいいんだ。長くは待たせない」

そう言っても少女はあまり残念そうな表情を見せることなかった。

「まあまあ、もう少し話を聞いていかない?まだ話してないこともあったし・・・・・・」

そう言うが正直なところ、この少女はさっきから同じことばかりを話しているように思われる。

魔物相手に戦っている、最近は上手い作戦も立つようになって死ぬことはまず無い、職場では皆が和気あいあいと・・・・・・。


どうにも胡散臭い。


一度そう思うと少女の話そのものが怪しく聞こえてきた。どうもおかしい、一旦断ろう、と俺は席から立った。

「やっぱり一度考えさせてよ。どこに行けばいいの?今度・・・・・・」

しかし、少女は俺の言葉を聞かずに立ち上がり、俺の進路を塞ぐように移動した。

「まあまあ、もう少し、ね?」

少女は無邪気な笑顔でそう言ったが、俺はもう彼女を信じることはできなかった。

「いや、悪いけど俺は行くよ」

「あ、待って・・・・・・」

歩きだした俺とそれを止めようとした少女の息は全く合わずに、肩と肩がぶつかってしまった。

「きゃっ」

少女が悲鳴とともに倒れ込んだが、俺はもう彼女は前の世界で言う「キャッチセールス」の類だと確信していたので、振り返らずに店を出ようとした。

その時である。

店の中からすすり泣きが聞こえたのだ。予想外のことに俺の確信は揺らぎ、少女のところに戻ってしまった。

「ど、どうしたんだよ・・・・・・?」

おそるおそる尋ねると少女は黙って手を差し出した。

その掌の上には壊れた小さなガラス細工と思われるものが

乗っていた。ガラスの女神かなにかの翼がもげてしまっていたのだ。

黙って泣き続ける少女に俺は確認のため質問する。

「・・・・・・さっき肩をぶつけたときに壊れちゃったの?」

少女はうつむいたまま、泣いたままでうなずく。

「ご、ごめん。そんなつもりは、」

そう言いかけたところで少女は顔を上げ、キッと俺を睨みつけた。

「とっても大切なものだったのよ!どうしてくれるの!?」

「ごめん!俺にできることがあれば・・・・・・」

「何?あんたが何かしてくれたらこれが直るっての?ふざけないでよ!?」

俺の言葉を跳ね返し、少女は再び泣き出した。


俺はどうすることもできずにそのまま少女が泣き止むまで待っていた。立ち去ることもできない、慰めることもできなかった。俺にはどういう行動をとるべきか全くわからなかった。


数分経って、少女はようやく泣き止んだ。目元の涙を拭き、立ち上がり、泣き腫らした目で俺を見上げる。

「・・・・・・なんでもするって言ってたわね?」

ドスの利いた声。思わずぞっとした。

「言ったけれど・・・・・・」

少女がまだ「キャッチセールス」だという疑いが残っていたこと、少女の凄みのある声が俺の返答を鈍らせた。

「じゃあ、やっぱりうちに入ってよ。その後でどうするか考えるから」

どうやらレジスタンスに入るだけでは許してもらえないようだ。

「それは・・・・・・うーん・・・・・・」

断っておくが俺は別に償いをすることがイヤだった訳じゃあない。

彼女が信用できなかったのだ。

普通、自分の大切なものを壊した相手と一緒にいたいと考えるだろうか。

そんなことはない。少なくとも俺はイヤだ。

しかし彼女はガラス細工を壊した俺をまず入団させ、その後に償わせようとしている。これでは償いの後も近くにいることになる。

このような小さな矛盾が俺の心に薄く影を射し、二つ返事することを妨げたのである。

「・・・・・・わかったわ。じゃあ賭けをしましょう」

「賭け?」


†††1-12


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