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詰みゲー!  作者: 甲斐柄ほたて
第三章 狂った歯車は暴走を始める
61/141

3-22 石の盾

†††3-22


「誰もいない・・・・・・」

「・・・・・・」

町に入り、いくつかの通りを横切ったのだが未だに人っ子一人見あたらなかった。

「ここにも、こっちの通りにも」

お嬢様が大通りだけでなく、脇道ものぞいては首を振る。

人のいない昼の町というのは異様な光景だった。

「一体何があったんだ・・・・・・?」

そんなつぶやきが人のいない静寂に飲み込まれていく。


「・・・・・・お嬢様、屋敷に寄っていきましょう」

「・・・・・・なぜ?」

お嬢様の声にはややトゲがあった。余計なところへ寄らず、時計塔へ向かいたいということか、あるいは考えが読まれたのか。

「・・・・・・お嬢様。お嬢様は屋敷で待っていてください。私が時計塔まで行きます」

「嫌よ。わたしもこの目で確かめる」

「・・・・・・あくまで待っていてはくれませんか?」

私の声のトーンが無意識に落ちた。

「ええ」

お嬢様が私の様子に少し身構えたように堅い声で応える。

「そうですか」

私はお嬢様の肩をつかんでやや乱暴に突き飛ばした。


「きゃっ」

お嬢様は尻餅をついた。

ここは路地。両側には石造りの建物が並んでいる。道の幅は狭くはない。

仮に両側の家と家をつなぐように壁を作ればこの道はもう通り抜けることはできなくなる。人の行き交う道路にそんな壁を設計するような馬鹿はまずいないが。

「・・・・・・『石盾ストーンウォール』」

そんな馬鹿なことを実現してしまう魔法を使用した。

地面の石畳がメリメリバリバリと音を立ててめくれ、伸び上がって石の壁を形成した。

お嬢様を閉じこめるように石の壁をお嬢様の前後に二つ作り上げる。丈は十分に高いのでお嬢様が自力で上ることはできないだろう。

「オーレン!何よ、これは!出しなさい!」

壁をどんどんと叩く音とともにお嬢様の甲高い声が聞こえる。

「すみません、お嬢様」

お嬢様には聞こえないような小さな声でぼそりと謝って私は踵を返して時計塔へ向かった。


†††

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