1-10 魔女っ子登場
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丘の上から見えた町。山の上の町(母親は避難所と言っていたが)にはドーム型の家が多かったが、ここは元の世界に似た四角い建物が多かった。
いや、そう言うよりも、ヨーロッパとかの町並みに酷似している。違和感を感じるが、それは色遣いのせいだろう。
レンガ造りの建物が並び、道は十字に交差、碁盤の目を形成している。
町の真ん中には一際大きな時計塔があった。
「何なんだ、この世界は・・・・・・」
俺は元の世界とあまりによく似た町を眼下に見下ろしてつぶやかずにはいられなかった。
町に着いた。
・・・・・・けどどうしよう。何をするプランがあるわけでもない。
ぶっちゃけノリで何も考えずにただ来てみただけだから当たり前だが。
何か魔術師的な格好をしている人を適当に捕まえてみようか、きっとその辺にいるだろ。
肩をとんとん、と叩かれた。
「ねえ。ねえ、そこの君」
若い女性の声だったので男性の場合の倍くらいの速度で振り向くと、まさに魔術師っぽい格好をした同い年くらいの女の子(美人!)が立っていた。
頭の大きさに対して不釣り合いに大きな黒くて鍔のある帽子をかぶり、その帽子から腰の辺りまで伸びるよく手入れされた長い金髪があふれ出ている。
瞳の色は黒で、肌は白く、鼻はちょっと低い。小さな耳には三日月のイヤリングがまぶしい銀色の光を放つ。
人形のように美しい顔立ちに、黒いローブを来ていてもわかる均整のとれたスタイル。なぜか右手に持っているただの木の棒みたいな杖か何かもかわいく見える。
要するに俺のストライクゾーンどんぴしゃだったのだ。
(YES!!)
心の中で力一杯そう叫ぶ。女の子がちょっと不思議そうな顔で小首を傾げ、のぞき込むように俺を見る。
「君、どうかな、レジスタンスに入らない?」
「レジスタンス?」
まるでサークルか何かの勧誘みたいなノリで少女は紙を差し出す。
チラシだった。当然読めない。
「ごめん。俺読めないんだ、字」
ちょっと語弊があるとは思ったが事実なのだから仕方がない。
ああ、と納得したように少女がうなずく。
(説明してくれ。説明してくれ。会話してくれ)
言っておくが下心など全く無い。無いったら無い。
「じゃあ、説明するわね。立ったままじゃなんだから何か飲みながら」
当然俺は二つ返事でついていった。
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