1-9 下山するだけの話
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ハンナとその母が見送りに来て手を振ってくれた、のは数時間前。山を下りて、なぜか上って、ようやくふもとにたどり着いた。
「ああー、もうやめよっかな・・・・・・」
早くも挫折のきざしあり、だが平々凡々な俺には過酷すぎるハイキングであった。
「あーくそ、足が痛え・・・・・・」
などとぼやきつつ、さらに歩くこと一時間。野に咲く花とか、鹿とか見ながらこの世界は驚くほど前の世界と似ていることに気づく。
ここが違う世界だとすればもっとこう・・・・・・めちゃくちゃでもいいはずだ。それこそ人間がエイリアンみたいな格好だとか、言葉が一切通じないとか。
特に会話だ。どうして会話があんなにも自然にできたのか不思議で仕方ない。
「やっぱり夢なのかな・・・・・・」
そんなこんなで看板を発見。しかし、読めない。
「なんでだー!会話はできただろーが!」
なお、さっきまでの会話がなぜ成立していたかというと・・・・・・謎だ。テレパシー的な何かだと思う。
もっとも、それは感覚的な話だが。
とりあえず看板にはテレパシーが通じないようだ。
面白くないので足下に転がってた石ころを蹴っ飛ばしながら歩くこと更に三十分。
ようやく町が見えた。
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