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3-6 登校道中にて
†††3-6
「お嬢様、今日はいい天気ですね?」
「・・・・・・」
お嬢様は道のはるか前方を見据えたまま何も言わずに歩き続けていた。
「・・・・・・お嬢様、気分が優れないのですか?」
「・・・・・・」
お嬢様は依然として前を向いたままで反応は無かった。
「お嬢様!一度屋敷へ・・・・・・」
「もうよい。お前は黙って付いて来ればよい」
突然、お嬢様はこちらを振り返って叫んだ。
私は全く予期していなかった事態に棒立ちになった。
しかし、この程度のことで執事が狼狽えていては話にならない。
「お嬢様、今朝おっしゃいましたね。『私は魔術が使えない』と。そのことでございますか?」
お嬢様はどこか泣きそうな顔で私の目を見た後、ふと視線を落とした。
「そうよ」
†††