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3-1 ニーナは脇役
町に名前を付けました。
†††3-1
陽暦4932年
旧ウェストリア連邦 テポト王国
北西の町 クロックタウン
エストラルト公爵家
東棟二階
「お早うございます、お嬢様」
「ああ、お早う」
少女は眠たい目を無理に開けた。
執事になどに眠気に負けているところなどみせるものか、と言わんばかりであった。
しかし、まだ十歳そこそこの少女が睡魔を完全に御し切れるはずもない。まぶたはゆっくりと閉じていった。
「朝食ですよ、お嬢様」
私は笑いをこらえながら言った。
案の定、少女ははっと目を開けた。
「わかっている」
私が今日の予定をお嬢様に全てお伝えしたところで一人のメイド、ニーナが一礼して入室してきた。
「ちょっと」
ニーナはこそこそと私のそばに寄ってくると耳打ちをした。
「旦那様が?」
私が聞き返すとニーナはこくりとうなずいた。
ニーナによれば、旦那様がお呼び、らしい。
一体何を言われるのだろう?
「わかった。ではお嬢様を下までお連れしておいてくれ」
私はニーナに、新入りメイドに、初めての任務を言い渡し、あたふたする彼女をおいて四階の書斎へと向かった。
†††