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詰みゲー!  作者: 甲斐柄ほたて
第二章 不断なる少年は勇者となる
38/141

2-22 勇者

†††2-22


貫禄のある中年の男は流暢な関西弁で宣言した。

「汝、サッキー・ジョンを勇者に任ずる!」

そこで俺が静かに異議の声を上げると、

「勇者がなんやわからんのか、しょうのないやっちゃな。説明したる」

「いや、そこじゃないです」

「勇者ってゆうのはな、今回特別に作った役職や。在籍すんのはお前一人。わざわざ『裏』から来てもうた客人を一般兵と一緒にはでけんからな」

「この国の人ってホント他人の話聞かねーよな!」

「お前に勇者としてやってもらわなあかんことは、『王宮パレス』の破壊や」

耳慣れない単語に俺は名前のことも忘れてしまった。

「パレス?」

「せや、『王宮パレス』や。細かいことは後で大臣にでも説明させるさかい、今は敵の本拠地やとでも思っとってくれ。オーレン、後で説明頼むわ」

王様は臣下の一人を指名した。

指名された臣下は深く礼をし、

「御意のままに」

と言った。

「詳しく頼むで」

王様は念を押すと俺に向き直った。

「勇者であるお前には『王宮パレス』を破壊してもらう。わしらの軍やレジスタンス連中では歯が立たんのや。せやさかいに、『裏』からお前をわざわざ喚び寄せたんや」

「あ、あの、ええと・・・・・・」

俺はどう言っていいのかわからなかった。山を下りたときにはこんな感じの展開を期待していたが実際に直面するとまた別物だった。

俺にできるのか?

これが最初に浮かんだ疑問だ。

この国の連中、レインをはじめとする人たちは「君ならできるよね?」感をぷんぷんさせて俺に話を進める。

しかし、俺はまだ何もわからない。

ミリアは俺には魔術師の素質があると言っていた。

だが、まだ俺は魔術師でもないし、実力なんてわかるはずもない。

自分も、相手も、俺にはまるでわからないのだ。

こんな状況で判断を下せと言う方がどうかしている。


だから俺はこう答えた。

「俺には、まだ何ともいえません。勇者にするのはもう少し待ってください」

「何言うてんねん、お前はもう任命されたやんけ。逃げられへんで」

王様は俺の提案を即座にはねのけた後、にやっと笑った。

「大丈夫や。そこにおる大魔術師がお前なら大丈夫やて、言うたんやから、お前やったら大丈夫やろ。そんな気張んな。失敗しても・・・・・・誰もお前のせいにしたりはせん」

俺は息をのんだ。

目の前の関西弁の王様は失敗することの、つまりは国が滅ぶことの覚悟はしているのだ。そしてその責任は、・・・・・・おそらくは国王である自分自身にあると思っている。そういう口調だった。


すべての責めを一身に受ける覚悟があるのだ。


それに引き替え、俺は無知を理由に断言することにビビった。勇者になってやる、俺に任せろ、と。


俺は昨日ミリアに誓ったばかりじゃないか、「この国の人のために戦う」と。

だったら何を迷うことがある?

覚悟なんてあの時にできてるはずだろ?


・・・・・・覚悟はいい?

「当たり前だ」


俺はぼそりとつぶやくと、顔を上げ、王様に向き直った。

「王様、必ずや『王宮パレス』を破壊してみせます。待っていてください」

王様は驚き、俺の目をまっすぐに見た後、ふっ、と笑った。

「気張んな、言うたのに」


†††

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