2-5,2-5.5 卒業……、
†††2-5
半年が経った。俺は誰も待ってはいないボロいアパートに戻り、テーブルにぽい、と卒業証書の入った筒を投げる。
力なく座り込み、天井を見つめる。照明がぶら下がっているがそんなものは目に入らない。じゃあ、何を見ていたか聞かれても困るが。
高校を卒業しても一緒だよね、と確認してきたときの花蓮の顔を思い出す。期待とわずかな不安を内包した表情だった。
あのとき俺は当たり前だろ、と言い切ってやった。かなり照れくさかったけれど、あいつがあまりに真剣な様子だったから。
「聞いといてなんなんだよ。お前が約束破ってんじゃねえかよ・・・・・・」
そのまま俺は寝転がって溢れ出る涙をごまかそうとした。
誰も見ていないというのに。
†††2-5.5
惰性で高校は卒業した。
ただ学校に行くだけで卒業することはできた。
だけどその後は?
大学へ行く?仕事に就く?・・・・・・何もしない?
わからなかった。どうすればいいのか。何もわからなくなってしまった。
もしも、俺にそばにいてくれる友人や家族がいたならばあるいは立ち直れたかもしれない。
しかし、それは空想の話であって現実の話ではない。
俺には友人も家族もいない。俺と一緒にいてくれたのは花蓮だけだった。
それを失くした。亡くしてしまった。
もういない。もういないのだ。
・・・・・・・・・・・・。
三日後、俺は天狗山の麓に立っていた。
†††