1-21 試合に勝ち、勝負に負ける
†††1-21
店を出てミリアが泊まっているという宿へ向かう途中、例の勝負の制限時間として設定していた「次の鐘」が鳴った。
鐘というのは丘の上から町を見下ろしたときにあった時計塔のもののようだ。おそらくは定時ごとに鳴るのだろう。
その鐘の音を聞いて俺は勝ち誇った顔でミリアを見た。ミリアがけげんそうな顔で俺を見返す。
「・・・・・・俺の勝ちだな」
「は?あんたさっき降参したでしょ?」
「そうだ、たしかに降参して『俺の負けだ』と言った。でもな、ルールでは『参った』と言わなければ負けにならないんだ。つまり、参ったと言わずにまだ立っていられた俺の勝ちだ」
そこまで言った俺の顔をミリアが冷たい目で見る。
「でもあんた、負けたときはレジスタンスに入会するって言ったわよね」
「言った」
「さっき入会したわよね」
「勝つためには仕方ない」
手続きをしなければ負けていないとバレてしまうじゃないか。
そこで俺はついに勝利の喜びを抑えきれなくなった。
「勝ったぞー!やったー!」
夕日が沈む町に向かって叫ぶ俺。
そして後ろから俺を見つめる女一人と猫一匹。
「・・・・・・バカよね」
<バカだね>
†††
設定集を作りました~。
第一章時点での設定をおさらいしたい場合は見てね。