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詰みゲー!  作者: 甲斐柄ほたて
第四章 月、地平に沈む
126/141

4-38 赤封筒の手紙 

†††4-38



平野と裏庭をつなぐ門が大きな音を立てたのでシャープが振り向くと、走ってきたのだろうか、ロベルトが息を切らせて門を開けていた。それを見て門の近くにいたシャープは馬から下りた。ジョンは門にもロベルトにもまだ気づいていない。


「どうしたんだ、ロベルト。そんなに慌てて・・・・・・」

「シャ、シャープ、ちょっと来てくれ」


ゼエゼエ喘ぎながらロベルトはシャープに歩み寄り、一枚の紙切れを差し出した。シャープは眉をひそめつつその紙切れを受け取った。

その紙切れは一通の手紙だった。

シャープは「例のアレ」についての手紙だと思ったが、すぐに打ち消した。その手紙が緊急時に用いる赤封筒に入っていたからだ。


無言で手紙を受け取り、封を切る。赤封筒ということもあってシャープも多少の覚悟を持って中身を読んだ。

しかし、その手紙はシャープの予想よりはるかに悪い内容の手紙だった。


手紙の内容を要約すると、以下のようになる。


『橋<ブリッジ>』がクイーン級の魔物に襲撃されて大打撃を受けてしまった。その際に魔物に侵略された地域で活動していた国軍隊員が多数行方不明になったこと。

その中にはミリア・ワッフルワイン小尉も含まれていること。

ジョンの今後の成長の妨げになる恐れがあるため、親しい間柄であった小尉の消息については秘匿すべきであるということ。


シャープは手紙を握りつぶした。



***



シャープは手紙をぐしゃりと握りつぶし、震える手で白いあごひげを撫でつけた。

ロベルトが不安そうな表情でシャープを見る。


「いったいどんな内容だったのですか?」

「・・・・・・」


シャープは黙って大尉からの手紙をロベルトに見せた。手紙を読むにつれてロベルトの顔が大きく歪む。


「ミリアが・・・・・・!」


手紙を読み終えたロベルトはキッと顔を上げると、シャープが下りた馬のあぶみに足をかけた。


「おい、何をしている」

「見てわかるでしょう。馬に乗ってます」

「・・・・・・どこへ行く」

「ジョンの所へ」

「なぜ」

「・・・・・・お察しの通りですよ」

「命令違反だぞ」

「そうですね」


肩をすくめるロベルトを見て、シャープはため息をつき、ひらひらと手を振った。


「わかったよ。好きにしろ。尻拭いはしてやる」

「すみません」

「いいさ、ワシが言う手間が省けた」


ロベルトは泣きそうな顔で苦笑すると、鞭を振るってジョンの所へ馬を走らせた。



†††

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