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詰みゲー!  作者: 甲斐柄ほたて
第四章 月、地平に沈む
112/141

4-24 兄は兄

††† 4-24


所変わって、ここは道場。

ミリアはジョンにベンが実の兄ではないことを明かした。


「えええええっっっっ!!!!????」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「初耳だよ、ぐはあっ!」

「よそ見をするなぁっ!」


衝撃の事実を知ったジョンのわき腹にシャープが隙やり、と槍を突いた。

わき腹をさすりつつもジョンは槍を構えるとシャープも白い髭の生えた口元をにやりと歪めて槍を構えた。


さて、ジョンとシャープがまた槍の稽古を始め、それに合わせるようにミリアが話し始めた。

ちなみにこれはシャープの指示である。ジョンの気を逸らしているのだ。戦闘中に雑念が入らないようにするというれっきとした稽古である。きっと。



「・・・・・・まあ、あたしのお父さんの弟の息子なのよ、ベンジャミンは。あたしの両親は一緒にいられなくってね。あたしはお母さんに付いてったんだけど、あたしが八歳の時に母さんが病気で死んじゃって。で、今度はお父さんがあたしを引き取ってくれたんだけど、その二年後にお父さんも病気で死んじゃった。あたしはそのときに叔父さんの養子になったのよ。で、ベンが兄さんになったってワケ」

「・・・・・・俺に言えた義理じゃないけどお前もヘビーなことをかなりさらっと言うよな」

「そうねえ・・・・・・。うつったのかしら」

「病気みたいに言うなよ」


ちなみにジョンはミリアの話に気を取られてここまででおよそ七回打ち込まれている。


「ついでだから東狼団についても話しておくわね」

「ついでかよ」

「その前にまずはイーストリア連盟について。イーストリアは国家群よ。まあセントリア連合もウェストリア連邦もそうなんだけどね。東の大陸の国は大体がイーストリア連盟の加盟国よ。そういう関係がもう何百年と続いてるの」

「東の大陸の国で同盟を作ってると・・・・・・。リーダーの国とかはあるのか?」

「あるわよ。まあ、盟主はずっとアルモンド王国って言うところだったわ」

「へーえ」

「で、そのアルモンドの王族に代々使えてきた騎士団が・・・・・・」

「が?」

「東狼団よ!」

「おおっ!」

「でも統一戦争の時にアルモンド王族が皆殺しにされちゃって。行き場がなくなったのよ」

「・・・・・・統一戦争?」

「ああ。統一戦争ってのは五十年前の世界大戦よ。三大陸の国家群が全面戦争をしたの。結果は西側ウェストリアの完全勝利。以来、西側がこの世界を牛耳ってるのよ」

「じゃあ、俺があの城で会ったのは・・・・・・」

「そーよ。彼は上国インテグラリア第二代国王グレゴリオ・テラ・ドリアンよ。この世界の統治者。最高権力者ね」

「げ・・・・・・。俺そんなエラい人と口聞いてたのか。なんか吐きそう・・・・・・、ぎゃあ!」


顔色を悪くしたジョンにシャープが槍で猛攻をしかける。ジョンも必死で防ぐが、やはり防ぎきれずにいくらかはもらっていて、もはやボロボロになっていた。

だが、ジョンはそんな状況でも質問を続ける。


「で?アルモンドの王族が殺された後、東狼団はどうしてたんだよ?」

「まあ、その恨みから一部の過激な連中が上国と喧嘩したりしたわ」

「上国と・・・・・・喧嘩?」

「そーよ」

「どういう意味だよ」

「要するに・・・・・・テロとか、ゲリラよ」

「え・・・・・・」

「そんな顔しないでよ」

「・・・・・・」

「だからそんな顔しないでって。あたしはもちろん、今の団員もその点はどうしようもなく恥じてるわ。同じ団員であるあなたにまでそんな目で見られたくはないのよ」

「・・・・・・悪い」

「・・・・・・。団員は基本的に先代の息子や娘が代々受け継いでいく形態よ。騎士団としては異質だけどね。そういうのがあるから、現団員は親の世代の失敗を理解して恥じていても、大っぴらに認めたくはないのよ。なんせ、自分の両親の過ちだからね。仮に団員が先代の行為を肯定する発言をしたとしてもそれは完全な本心ではないかもしれないということは覚えておいてね」

「ややこしいなァ」

「そーね。・・・・・・まぁそういうわけで上国との関係は悪いわ。おまけにゲリラ活動したせいで西側はもちろん、中央、東側にまで嫌われてるわ。当然といえば当然だけどね。今は魔物の侵攻とかがあって西側は仕方なく手を組んでるけど・・・・・・」

「けど?」

「・・・・・・なんでもないわ」

「・・・・・・そうか」

「ええ」


ミリアの言葉が終わり、シャープの突きの連撃がジョンを襲う。いくつかをまともにもらいつつもジョンはシャープの小手に突きをかすめることに成功した。

ジョンが喚起の雄叫びを上げ、シャープの驚愕の表情を見ながらミリアは思う。


魔物が本当にいなくなれば、次に狩られるのは誰かしら、と。


†††

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