4-21 歓迎式
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ジョン達の前に現れたお姫様は屋敷に入るなり、きょろきょろと辺りを見回し始めた。
「姫様、お行儀が悪いですよ」
「ああ、せやな。初めて見る屋敷やからついな」
そう言ってケラケラと笑う。更に姫は首を傾げて言う。
「おかしいなァ。ここにおるんはメイド以外は五人やって聞いてたんやけどなァ・・・・・・」
「兄は今、私用で出ています」
ベンのことだ。
「そおなんか、残念やな」
耳元の髪をくるくるといじりつつ、姫が正面を歩いていく。脇にはジョン達やメイドさんがずらりと並んでいる。
貴人ってのはこういう人のことを言うんだな、とジョンは心の中で不思議に納得する。他人に敬われるべくして生まれた存在。生まれながらのナントカってヤツ。
「レイン中佐から聞いたとは思うけど、ウチは今日からここで住むことになってる。その間ウチのことは王女やと思わんでええよ」
「えっと、それはどういう・・・・・・」
「敬語でなくて結構!・・・・・・ってことや」
クラリス姫は一声元気よく叫ぶとにこっと笑った。その言葉を聞いてシャープが声をかける。
「・・・・・・よろしいので?」
「もちろんや。二言は無いで。ウチは女やけどな」
「では、クラリス。あなたはここへ何用で来たのかな。ここはただの訓練場だが」
「父上がウチにここに行け、言うてん。なんや次世代の軍がどうのこうの・・・・・・。よおわからんかったけど、まあ仲ようしてや」
「なるほど・・・・・・。わかった」
ジョンはなにがなんだかさっぱりだったが、シャープにはわかったようだ。
「みんなもこれでええかな?」
クラリスが輝く目でぐるりと周りを取り囲む人間を見る。その瞳に若干の不安の光を宿していたのを見て、まずミリアが声を発した。
「あたしは歓迎するわよ」
<じゃあ、ボクも>
続いてキティ。更にロベルトがうなずく。声が出なかったのだろうか。最後にジョンが、
「もちろん歓迎だ。大人数の方が楽しいし」
許可した。
それを聞いてクラリスは大げさなまでにガッツポーズを取った。
「いよおぉぉぉぉっしっ!!みんなよろしゅう!」
こうしてクラリスは満面の笑みとともに屋敷の住人となった。
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