4-16 黒猫と王女
†††4-16
昼過ぎにミリアとロベルトが戻ってきた。ミリアはいつもの魔女のような出で立ちであり、彼女のとんがり帽にはやはり小さな猫が乗っかっていた。
さらにミリアは両腕で抱えるように荷物を持っていた。
玄関ホールに出迎えにきたジョンにキティが甲高い声を上げる。
<ジョン、ひどいよ!僕を置いていくなんて!>
「来たのかよ、キティ」
<なにぃ、ジョンのくせに!>
「キティのくせに!」
いーっと歯をむき出してキティを威嚇するジョンをミリアが睨む。ジョンがその迫力にたじろいでいると玄関ホールにベンが現れた。
「おお、帰ってきたのか、ミリア、ロベルト。・・・・・・しかしすごい荷物だな」
「ただいま、兄さん」
「ただいま戻りました、ベンジャミン中尉」
<ベンもひどいよ!僕を置いていくなんて!>
「はっはっは、悪かったよ、キティ。こんなに長くなるとは思ってなかったんだよ」
飛び込んできたキティをベンが抱き止めてぐるぐる回る。ベンとキティはかなり仲がいいようだ。
「帰りが遅れてすみません。やあ、参った参った」
「えらく疲れたみたいだな。何があったんだよ、ロベルト」
「ええ、ジョン。今度『屋敷』へ来る客のことですがね、中佐に誰か聞いてみたんです。そうしたら・・・・・・」
***
「あれ?言ってなかったっけ?」
レイン・エストラルト中佐は個室の窓辺に置いた鉢植えに水をやりながら素っ頓狂な声を上げた。どうやら説明したと思いこんでいたようだ。
「ごめんごめん。王女だよ、王女。えっと、確か・・・・・・」
「クラリス姫です。お嬢様。クラリス第四王女」
「そう、そのクララさん」
「クラリスです、お嬢様」
中佐をオーレン大尉が援護する。この下りを飽きるほど見てきたロベルトだが、このときは心の中でツッコミをいれているどころではなかった。
王女が来る!という衝撃がロベルトの脳天を突き抜ける。
「大丈夫かロベルト小尉?」
「も、問題ありません」
「ふむ、そうか。・・・・・・王女は明日そちらへ行く。皆にも伝えておくように」
(明日ァ!?)
脳天からの衝撃が再びロベルトを襲うが、それを必死にこらえて彼は返事をした。
「り、了解しました」
***
「・・・・・・王女?」
「ジョン、あんた国王に会ったんでしょ?その娘よ。四女」
「クラリス姫がなぜここへ?」
「わかりません。前に聞いたのですが、理由は大尉たちも知らされていないようです。どうも王様の命令だそうで」
「王様の・・・・・・?」
「はい」
「目的は何だ・・・・・・?」
「さあ」
「・・・・・・・・・・・・まあ、いいさ。王女様が来ようが来まいが、私たちがやることは変わらない。ジョン、そろそろ時間だ。シャープが待ってるぞ」
「りょーかい、ベン」
ジョンとベンは踵を返してシャープの待つ中庭へと向かった。
†††