1-15 VS女魔術師③
†††1-15
「くっ・・・・・・!」
立ち上っても攻撃されそうだったので前転して後ろにいた少女に対して正面を向く。
が、少女はいない。
「くそっ、そういう魔術なのか」
この世界の魔術などこれっぽっちもわからないがつぶやいてみる。少女が反応してくれれば情報を拾えるからだ。
「そうよ」
またもや後ろから攻撃された。今度は背中だ。
最初は腹、次は後頭部。今度は背中だ。一点攻撃してこないのはややありがたい。また後頭部なんか殴られたら本当にやばい。
痛みにうずくまる俺に少女は言う。
「あたしの術があんたに見破れるかしら?」
笑いながら言ってやがる。見てろ。
俺はまた転がって、壁際に寄った。
「これならどうだ・・・・・・?」
そして立ち上がる。壁を背にして。
少女の攻撃は全部不意打ちや背後からのものだ。なら、相手を正面に置いて、背を隠す。
これなら不意打ちも背後からの攻撃もできまい。どうだ?
「へえ・・・・・・。でも残念でした」
少女はそう言うと到底届かないような位置から杖を振った。上から下へ。何かを殴るように。
はっとして俺は頭をかばったが杖はちょうど腕を上げてがらあきになったわき腹に当たる。横向きに、地面と水平に。
「ぐふっ・・・・・・」
「どう?まだ降参しないの?」
「へっ、誰が降参なんか」
「強情ね」
少女がもう一度杖を振り上げる。それに合わせて俺は少女に向かって飛び出した。距離は二メートルほど。決して遠くはない。むしろ近い。
こいつが『消える』のが早いか、俺が捕まえるのが早いかだ。
少女が一瞬の逡巡の後、杖を振りおろす。俺は一瞬加速し、進行方向もわずかに左へずらす。
果たして俺は賭けに勝った。杖は俺の右わき腹にわずかにかすっただけでほとんど空振りになった。少女は杖を振ってしまったので一動作遅れる。『消える』には多分、時間が足りない。
俺は少女の胸ぐらをひっつかんだ。
†††