第四話 ~翡翠色の瞳~
大斧戦士モロクとの戦いから既に半刻が過ぎようとしていた。長い長い地下通路も、ようやく出口が見え二人はダリル旧街道へ到着した。近くの木に寄りかかりしばし休息をとる二人。そこで先ほどモロクに吹っ掛けた言葉がベルの頭を過ぎる。
-私は、この国を壊すー
「アハト、お前さっきこの国を壊すって言ってたよな。どういうことなんだ?」
「……お前、今のこの国を見てどう思う?国王は酒池肉林に溺れ、大臣共は私腹を肥やすことに執着し、誰も国を見ようとしない。国の治安は日に日に悪くなる一方だ。」
「それは……」
アハトは天を仰ぎながら呟く。
「この国は腐っている。誰かが救わなければならないのだ」
何かを悟ったような目でそう語るアハトに、ベルは何も言うことができなかった。悲しみを湛えた淡い緑色の瞳がダリル城を見つめる。
(ゼス様……私が必ず、この国を……)
眼を閉じ、祈るように頷く。
「行こうベル、もう少し行った先の町で仲間と落ち合う約束なんだ」
「あ、あぁ……」
ベルはその悲しい目と表情が気になりつつも、共に町を目指して歩き出した。