第二話 ~脱獄、そして~
会堂で番人である大斧使いに見つかってしまったベルとアハト。アハトはその大斧の一撃を防ぎながらも大きく体を吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。ベルがアハトを守りながら戦う形となった。
「……ハァ……ハァ」
「どうした少年、息が上がっているぞ。こっちは汗もかいていないというのに」
「うるせえな強面野郎が、さっきから偉そうに物言いやがって。」
ジリジリと二人が距離を取り合いながら、間合いに入るタイミングをうかがっている。その攻防がしばらく続いた。
「……少年、なんの時間稼ぎだ?」
痺れを切らしたのか、その男が尋ねる。
「すぐにわかるさ、後ろでも見てみるんだな。」
「後ろ?……ぐおっ!?」
振り向いた瞬間に襲いかかったのは、長刀の一撃。そう、ベルが稼いでいた時間は壁に打ち付けられたアハトが回復するまでのためであった。
「完全にとどめを刺していない相手を忘れるとは。軍の実力も落ちたな。」
アハトが長刀を仕舞いながら斧使いに言う。
「ふん……油断したわ……。お前ら、名をなんという。」
「アハト。この国を壊しに来た。このベルと共にな。」
「国を……?」
「そうだ、この腐りきった国を斬り捨ててやる。お前はその一番目だ。」
「……そうか、わが名はモロク。その志、気に入ったよ。そこの扉から地下通路に入れる。出口はダリル旧街道に通じている。逃げろ。」
モロクが階段下の出口を指差す。
「あぁ、助かる、行くぞベル。」
「あ、あぁ……」
駆け出すアハトの後ろ姿を見て、モロクはベルに声をかける。
「お主、ベルといったな。剣の腕は悪くない。強くなって、あの小娘を支えてやれ」
「……あぁ、じゃあな。お前には二度と会いたくないけどな」
「ぬかせ。国を壊すなら、もう一度まみえることになるぞ。」
「……なら決着はまた今度だな」
そう言うとベルもアハトの後を追う。間もなく、モロクの影は見えなくなった。