第一話 ~剣士ベル~
「ところでベル。脱獄したからには戦いも辞さずだが、武器の扱いは心得ているのか?」
「ああ、大丈夫だ。……と。」
ベルは倒れている兵士の剣を強引に奪い取る。ナイトブレードと呼ばれるその剣は、各国軍隊で使われている両刃の剣。軍の支給品なだけあって、強度と威力は多少なり約束されている。
「よし、ぼんやりしている時間はない。急ごう。」
「ああ!」
足早に出口へと駆け出す二人。先々で出会う兵士を斬っては進み、広い部屋へと出た。
「ベル、大丈夫か?」
「はぁ…はぁ…何とかな。」
この部屋はよく会議で使われている部屋でもあり、各フロアへ行くためにもここを使うため人の往来が激しい。長居はできない。
「……ん?」
ベルの目に、キラリと何かが光った。何だと近付くとそこには大きめな箱。
「こいつは……ファルクスじゃないか。なんでこんな名刀がこんなところに……?しかも、柄になんか宝石が……なんだこりゃ」
ファルクスと呼ばれるその剣は、長めな刃渡りと片刃が大きく反った、名のある鍛冶に打たれた名刀である。
その時、人の気配をアハトは感じ取った。
「!! ベル急げ!逃げるぞ!!」
「誰が逃がすか、この重罪人どもが。」
突如、巨大な影が現れ、手持ちの大斧で襲いかかる。
「ぬらぁぁぁ!!!」
ガキィィン!!
「きゃあッ!」
大きく斧を振り抜き、アハトの体が宙に舞う。その大斧から繰り出される一撃は、剣で防いだもののそのダメージは相当なものだ。
「アハト!ちくしょう、この野郎ッ!!」
ファルクスをそのまま装備し、相手に襲いかかる。
「ぬるい。そしてなんと下品な剣使いよ。そんなものでは俺には勝てないぞ!!」