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自分の体を満たしてしまうものは、いつでも汚い。心の奥が腐っていくようで、怖い。それでも生きていかなければいけない、命の重さが響いて、痛い。

自分の生きる場所を、感じられなくなったとき、苦しかった。


何人もの人がこの地に生まれて、生きているというのに。私は生きているということさえ、認めてもらえないのだろうか。


AがBを必要として、BはAのそばに。

DとEとFの、3人でずっと。

G、H、I、J、K、、、、その他大人数のなかの、OとPのであい。

LとMの間にある、消えることのないお互いを愛しいと思う気持ち。

NはQを忘れない。RはSを忘れたい。TはUを忘れたくない。VはWを忘れてしまう。

きっと、こんな具合で人のすべてが繋がっていて、途切れる事なんてないものだと思っていた。


でも私は知ってしまった。

[いない方がいい存在]というレッテルを、背中に叩きつけられたあの日。

逃げてしまいたくて、窓を掴むように空へ視線を投げた。


外はあんなにも晴れて、空一面に水色を敷いていたの。

まだ春は遠いというのに空は微笑むように青く、雲は春に向かって急ぎ足で流れるようだった。


短い丈のチェックのスカートに、赤の糸で小さく校章を刺繍された紺色のセーター。

これを着るのもあと数週間。

喉が焦げるように熱く、呼吸さえ難しかった日、

相手を威圧することでしか自分を存在させられなかった日、

頬から流れる涙を拭いてくれた、もういない先輩のジャージを抱きしめた日、

違う学年の人に恋をしていた親友と一緒にベランダに座り込んで泣きながら話し込んだ日、

苦しさから逃げるように、髪を染めた日、

消しゴムのカスで机がいっぱいになるほど勉強して、意識を飛ばさないと眠りにつけなかった日、

水を飲むだけで食べたものすべてを吐いてしまった日、

深く切る勇気のない指先を見つめて、朝を迎える日、

いたたまれなくて針を管に垂直に突き刺した日、

あんたは十分がんばってるよと言ってくれる存在のかけがえのなさを知った日、

どんなに怒鳴りながらも最後にはちゃんと私の頭を撫でるように

ポンポンと叩いてくれる大人がいたということを知った日、

いろんな色を映しだす携帯のウインドウが青く点滅することだけを祈っていた日、

その何色もある中でその時の私にとって青だけが意味のあるものだった日。


あの、四角いコンクリートの校舎でいろんな事に気づいて、傷ついて、笑った。

知らなくていいはずの事を知って、感じるべき以上に人の気持ちを感じた。


楽に生きることを汚いと思うあまりに、

ここで生きていくことに必死になりすぎたような気もする。


遠回りこそ、正しくて、近道をすることなぞ、間違っていると。

そう思っていた。

いつも私はどうしても、みんなにいろんな事をもっと考えてほしかった。


ただ、単に生きている、という事実だけじゃなくて、

生きているからこそ、動くことができて、想いを感じることができるのは私たちだけなんだということ。


自分ばかりでなく、人のことを思いやることは世界規模の問題解決にさえ繋がる可能性があるということ。

メディアや日本国全体から馬鹿にされている、永田町の人間が本当にそれまでの人間なのかということ。

人を愛することの意味、人を卑下することの意味、人を無くすことの意味、人を殺すことの意味。

そして戦争のこと。



でも、そんな事を口にする勇気が私にはなく、逆のことをするような弱さしかなかった。

他人をバカにして、蔑んで、見下して、笑っていた。

コンビニの前に座り込んで、スカートを履いているというのに、

あぐらをかいて座ることが少しも恥ずかしいと思えなかった。

それはたぶん、ひとりじゃなかったからだと、今になって考えてみればそう思う。


でも、それは永遠じゃなかった。

私は彼女たちを失ったわけではないのだから、悲しむことはなかった。

でも、そのとき、私はそれに気づけなくて、彼女たちが私のそばから、

どこか遠くに消えていってしまったのだと思ったのだ。

あとから彼女たちに聞いてみると

「あんたが遠くに行っちゃったみたいでさびしかったし。」とのことで。

全然気にすることはなかったみたいだった。


だけど、そのときの私はひどく悲観的で自分のことだけしか考えられなかったから、

彼女たちを心の中でひどく責めた。


「さびしい。」

「遠くに。」

「行かないで。」


誰にも言わずに、自分は一人で平気なんだって言い聞かせる毎日。

息を吸って、息をはいて、紅茶を飲んで、吐き出して、生きていた。

うつむかないように、首の骨と背骨にぐっと力をいれて前だけをぐっと見据える。

今、自分の目の前にあるものをまっすぐ受け入れられた。

何にも左右されない自分が欲しかった。

大きな力強さが必要なんだと思ったから。



大声を出して叫んで、泣いた自分が生まれてしまったとき。


答えてくれる声を探さなくても大丈夫なように。




「泣くな。大丈夫だから。あ・・やっぱ泣けって。」


そんな風にして、

やさしい、やさしいあなたの声があたしをあっためてくれる日がくるとは思わなかったから。


どうでしょうか。長くしようかしまいか悩んでいますが、、、第三話もよろしくお願いいたします。

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