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空を広げて、春を、

メールが溜めていくのは活字と、よく分からない感情と霧のような優しさ。電話が溜めていくのは声と、その温かな空気と、やりきれない、もどかしさ。

電話の声に、あなたを想った。


もう二度と聞く事のできないあなたの声を覚えてることは難しくて。

わたしはあなたの声を忘れてしまった。


あなたの口唇が動いているところなんて、みたことないけど、声は毎日とどいてたよね。

右手でぎゅっと受話器をにぎって、まっくらな空間にあなたの声を探すの。

青いランプがチカチカ点滅する。

それが青く光るたびに私の手だけが照らされて、ベージュみたいなピンク色をしたつめがパールみたいになってた。

外は雨が降っていて、窓をあけてみると、「世界の中心で愛をさけぶ」みたいだった。

葉っぱに雨が叩きつけられていて、朔ちゃんのいるアキの病室にいるようだったから。

それに、

わたしはあなたを心から、いとしく想っていて、

あなたもわたしを心から、愛しく想っているのがわかるぐらい、それが自然で、あたりまえ。

全部ほんとうのことだったの。

だから、そうなんだから、『朔ちゃんと亜紀の純愛』とおんなじだと思ったんだ。


体を求めたわけじゃなくって、肌を触れあうことを望んだわけでもなくって。

ただ、お互いの“ 存在 ”を求めて、たいせつにして、

このときの永遠を望んで、君を愛しただけなんだよ。


雨のせいで、すごくさむかったけど、

あなたと話をしているだけで、この寒ささえも大事にしようとおもえたんだ。

それに、ガーゼ素材の温かい毛布は、私の体を包んで、“あなた”でいっぱいにしたよ。

春の初めだったから風はまだ冷たくて。

梅雨じゃないのに、夜だけ雨が異常に降っていて。

それでも、私はあなたの声だけで十分、満たされて、光が射すようだったの。


こころが、あったまるの。

あなたの声は、あたしの体をふるえさせるほど、あっためてた。

やさしい声。

ほとんど、あたしの言葉へのあいづちだけの、それは、とてもあったかかった。


ちょっとだけいじわるして、話すのを止めると、

ちょっとだけおこって、『なんか 話して』って言う、あなた。

「あたしばっかり話してるよ? いいの?」

「いいよ」

「でも」

私の声をさえぎって、あなたは笑って言うの。

「いいよ。 話せって。 ききたい」


気づくと、なみだばっかり、あふれてた。

あなたへのいとしさで、息ができなくなるかとおもった。

ただ、いとしくて、いとしくって、

あなたがいて、あなたがちゃんと生きていてくれているということが、たいせつで仕方がなかった。


よろしければ二話も読んでいただければ光栄です。

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