033⚫️我が家のジニ係数
当たり前だが、妻には物欲がある。
しかし、その振れ幅が最近は大きくなってきた。
タブレットでネットを見てはキャラクターグッズを欲しがり、特にスイーツと鞄類に顕著である。
コラボ商品は増える一方で、煎餅にさえキャラクターが施され、一箱ごとに異なるポーズのステッカーが入っている。箱の封印を解くまで姿を見せない六種類、すべてがほしいのだという。
鞄ともなると値段が張る。妻は瞳を輝かせ、買ってもよいかと尋ねてくる。ダメと言えば機嫌は最悪になる。選択の余地はない。ネット通販での手続きは彼に委任される。
対して彼は、安売りスーパーを渡り歩き、自らの食材を整える。
もちろん、それらが妻の口に合うはずもない。妻は比較的安価な鶏肉は食べず、肉と言えば上質の牛である。
さらに箸の上げ下ろしまで注目している。彼の服の袖が汚れていようものなら、口を尖らせ、眼を見開いて強い口調で叱責が飛ぶ。
彼が顔を顰めると、なぜ、そんな不機嫌な顔をしているのか、と問いが放たれる。
彼は内心を押し隠し、こう応える。
ごめんね、生まれつきこんな顔なんだよ、と。
彼の家庭のジニ係数は、ふたりの間で大きく乖離している。
あるいはそれを幸福度と呼ぶべきか。
いや、きっと妻の幸福度も低いのだろう。
この世は不満に満ちている。急な売り込み電話、機器のトラブル、世の中の事件や事故に、不自由な言葉で文句を言う。
少なくとも家の中では、彼の存在は妻にとって諸悪の根源なのだから。
今夜も、彼はひとりでノートブックパソコンを開き、物語を紡ぎ始めた。
そうするしか、発散の方法がないからである。
やれやれ・・・。




