72時間の観測者
第4話
72時間の観測者
残り、72時間。
それは、
俺に与えられた最後の“観測時間”。
この裏側の世界は、
時間の流れすら曖昧だったが、
ログのタイムスタンプだけが正確だった。
俺は、
“世界の全ログ”を読む決意をした。
それは人の一生どころか、
文明そのものを丸ごと読む行為。
普通の存在なら、
意識が壊れて終わる。
だが俺は、
すでに「観測領域のバグ」だった。
だから壊れない。
⸻
まず、
最初に狙ったのは「神そのもの」のログ。
⸻
【神格プロセス No.01 内部ログ】
・ログイン回数:113回
・主な操作:
文明イベント挿入
災害パラメータ調整
英雄発生率操作
人口調整
⸻
神は、
奇跡も災害も、
“演出”として差し込んでいた。
英雄は偶然じゃない。
選ばれた“イベントキャラ”だ。
⸻
そして、
致命的なログを見つけた。
⸻
【緊急補正ルール】
・文明が発展しすぎた場合
・自己改変に近づいた場合
→ “リセットイベント”を発動
⸻
つまり、
この世界は
「気づいた文明」を必ず消す設計だった。
⸻
俺は確信した。
この世界は、
“育てて、潰す”ための箱庭だ。
⸻
そのとき、
俺の観測権限に変化が起きた。
⸻
《観測者権限:拡張》
《一部書き込み権限:解放》
⸻
……書き込み?
俺は恐る恐る、
一行のログに意識を伸ばした。
⸻
【ログ追記】
“KUROSE_REN は、処理保留”
⸻
書けた。
神のログに、
俺が“書き込めた”。
それはつまり、
俺が、世界の裏側のキーボードに
指をかけたということだった。
⸻
残り時間:71時間59分。
世界はまだ、
俺がバグだと気づいていない。
だがもう、
俺は“見るだけの存在”じゃない。
⸻
次回:
第5話『最初の書き換え』




