裏側で目覚める
第2話
裏側で目覚める
目を開ける、という感覚はなかった。
そもそも、
俺にはもう「目」も「体」もない。
それなのに、
“見える”。
無数の光の糸が、
この空間を流れている。
一本一本が、
誰かの人生だった。
生まれて、
笑って、
泣いて、
裏切って、
死んでいく。
それが、
音も匂いも温度もなく、
ただ“情報として”流れている。
ここは、
世界の裏側だ。
そう理解した瞬間、
俺の中に、
“読む”という感覚が芽生えた。
光の糸に意識を向けるだけで、
そこに含まれる出来事が流れ込んでくる。
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【ログ:村人A】
・7歳で妹を亡くす
・14歳で兵士に徴兵
・18歳で戦死
理由:王国同盟条約 第三項 発動
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【ログ:王国ログNo.0429】
・5年後、隣国と開戦
・王城陥落
・国王処刑
・人口の67%が死亡
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俺は息を呑んだ。
これは、
未来の出来事だった。
まだ起きていないはずの“結果”が、
もうログとして存在している。
この世界は――
最初から“終わりまで書かれている”。
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そして気づいた。
この世界の「神」は、
未来を作っているのではない。
すでに書かれたシナリオを
再生しているだけの“運営者”だ。
神は創造主じゃない。
管理者だ。
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ふと、
異質なログが流れてきた。
他よりも、
明らかに太く、
濁った光。
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【管理ログ:SYSTEM_ADMIN】
・監視対象:KUROSE_REN
・状態:観測領域に残留
・処理保留中
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……俺?
俺は、
“バグ”だった。
消したはずのアカウントが、
ログ領域に残っている。
つまり俺は、
世界にとっての“不具合”。
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その瞬間、
何かが“こちらを見た”。
光の流れの向こう側から、
視線のようなものを感じる。
この世界の「神」が、
俺の存在に気づいた。
そして、
新しいログが開いた。
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【運営者ログ】
・観測者エラー検知
・修正処理 準備中
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“消しに来る”。
本能でわかった。
俺は観測者として生き延びるか、
完全に削除されるか。
ここから先は、
俺の物語だ。
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次回:
第3話『神の嘘を読む』




