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第九話 賞金首

初仕事を終えたから、アレンとネオンの二人は5件の宙賊討伐依頼を受けて、達成した。


立て続けに依頼を受けたので、休息日を設けた。


その間、アレンはシルヴァーナとジーベックの整備に精力を傾けた。


大量の整備ボットと共に、作業用の宇宙服姿のアレンはジーベックの機関室にいた。


「クソ、碌にメンテナンスもしないで動かし続けやがって、宙賊共が」


ジーベックのエンジンは、艦と同様に旧型の核融合エンジンだったが、碌にメンテナンスされていなかった結果、所々に劣化が見られ、エネルギー生成効率が落ちて、核融合反応により生成されたエネルギーを十全に各部のジェネレーターへ、送ることができていなかった。


対ビームシールドの性能が異様に低かった理由が判明したアレンは、この中型艦の前の持ち主に憤慨した。


「全く。ただ装甲が貧弱なのは変わらないし、問題が解決したわけではないか」


戦闘艇の砲撃の一撃で船体に穴が開くようなことはなくなったが、対艦ミサイルや対艦レーザー砲、陽電子砲など、防がなければいけない攻撃はまだまだ存在する。


核融合エンジンのメンテナンスを終えたアレンは、作業ボットに最終確認をさせながら、一息ついていると、プルルルルと、コール音が入る。


アレンは、ヘルメットのタッチセンサーに触れて、通信に出る。


『アレン、作業は終わった?』

『あらかたはな、今はボットに最終確認をさせてるところだ』


『良かった、アレンに相談したいことがある、傭兵の仕事で』

『傭兵の仕事か、それで?』

『対面で話そ、シルヴァーナのところで待ってる』

『分かった、ボットの最終確認が終わったら、すぐ行くよ』


◆◆◆◆


問題なく最終確認を終えた作業ボットたちを引き連れながら、作業用の宇宙服姿から一般的なシャツとズボン、そしてジャケットに着替えたアレンがやって来る。


作業ボットたちを専用のコンテナに収容し、格闘形態のシルヴァーナに近づく。


シルヴァーナの整備をやりやすくするため、ARMS用のメンテナンスステーションを導入したので、本来の姿である格闘形態で、格納庫に収容することが出来るようになった。


ただしARMS用の電磁カタパルトがないので、発進するためには格納庫内を歩いてハッチに向かう必要があるので、スクランブル発進ができない欠点がある。


その問題に関しては、簡単には解決できないので、今は保留にしている。


「こっち」


シルヴァーナのコックピットから顔を覗かせたネオンに手招きされたアレンは、メンテナンスステーションのデッキに乗る。



上昇するデッキによってアレンはコックピットに近づく。


「よっ」

「ん、お疲れ様」

「ありがとう」


シルヴァーナのコックピットに入ったアレンは、補助座席に座る。


「エンジンはどうだった?」

「この艦に乗っていた宙賊共の頭をかち割ろうかと思ったな」


「全員が死んだか、軍の収容所送り、もう二度と日の目を見ることはない」

「だな、冗談はともかく、メンテナンスのお陰で核融合エンジンの出力が少し上がったから、戦闘艇の砲撃には怯える必要はなくなったな」


「それは朗報」

「ああ、それで相談したいことって?」


「シルヴィ」


ネオンが声を掛けると、コックピットの天球型ディスプレイに、手配書のようなホロデータが表示される。


さらに手配書の中から、中型戦闘艦と2機のARMSのホロデータが表示される。


「最近暴れてる宙賊団で、一度傭兵の討伐を退けて、懸賞金が懸かってる」

「手練、少なくとも傭兵の依頼で倒してきた宙賊の一味とは違うってことか」

「ん、そうみたい。この賞金首を討伐して懸賞金が欲しい」


「なるほど、シルヴィ、手配書のホロデータを送ってくれ」


《了解しました》


データを受け取ったアレンは、宙賊団の戦力を精査する。


「この2機のARMSが主戦力の宙賊団ってことか」


当然アレンは、宙賊の乗るARMSに注目する。


「いろんなパーツを移植してるせいで原型の影はほとんどないが、三世代ぐらい前のARMSだな、シルヴァーナの武装なら、負ける要素はないか」


「懸賞金は、1500万レボル、これは妥当だと思うか?」

「ん、討伐に失敗した傭兵はARMSとの戦いに慣れてなかっただけだと思う」


「マセナリーはそう判断してると」

「ん、それは他の傭兵も分かってる、だからこの賞金首は大勢の傭兵が狙うはず」


「ネオンは、この賞金首がいる場所に目星はついてるのか?」


ネオンは、戦場で天衣無縫の戦いをする一方で、敵の情報収集に余念はないし、敵の拠点を割り出したり、戦術や戦略を組み立てたりと、戦うことに関する能力が突出している。


それはネオンが戦争の為に作られた強化人間であることの所作とも言える。


「出没した宙域データと、母艦の性能から考えると、この小惑星郡帯に潜んでる可能性が高い」


天球型ディスプレイに、宙域地図が表示される。


「他の傭兵とかち合う可能性は?」

「結構高い」


《確率は60パーセントです》

「高いな」


マセナリーの規定では、傭兵同士の交戦は禁止されているが、この広い宇宙でどれ程の傭兵が守っているかは怪しいものである。


あまりに酷いとマセナリーが除籍され、ライセンスを二度と取得できないというかなり重い罰則を受けることにはなるが、死人に口なしという言葉もある。


「シルヴァーナは問題ないけど、ジーベックの防備はまだ万端とは言い難いし、正直他の傭兵と争いたくはないな」


「もしジーベックに被害が出るような相手なら素直に諦めればいい。リスクばかりを気にしてチャレンジしないのは勿体ないと思う」

「一理ある」


金はまだまだ必要だし、懐に余裕があるわけでもない、アレンはネオンの目利きを信じることにした。


「分かった、その賞金首を狙おう。すぐに出航準備する」

「ん、私も準備する」

「ああ、一時間後に出航だ」


判断が早いアレンは、そのままシルヴァーナのコックピットから出ていった。


◆◆◆◆


アイベルサスコロニーから約三時間ほどのほどの宙域に広がる小惑星帯、ジーベックのレーダーが、二隻の航宙艦を捕捉した。


「宙賊じゃないな、となると同業者か」


アレンはネオンに通信を繋ぐ。


『お互いに牽制しあってるところに私たちが来た、だから…』


二隻の艦からほぼ同時に通信が入った。


『二隻から通信が来る』

『ちょうど来たよ』


アレンは、タッチパネルを操作し、両方の通信に出る。


ブリッジのメインスクリーンに、片目義眼の大男と金髪碧眼の青年が表示される。


『よぉ、見ねえ顔だな。俺はマルドッグ、見ての通り傭兵だ』

『僕の名前はシャクレン、よろしく、新参者君』


『俺はアレンだ、わざわざ通信までして、何の用だ?』


『用向きは単純だよ、賞金首は俺たちのもんだ、命が惜しければ今すぐ回れ右をしな』

『マルドッグ、賞金首は僕たちのものだよ、でも大人しく帰れと言う意見は同意かな?、新参者には荷が重いと思うよ』


典型的な脅し文句に、アレンはどう返すか迷う。


『アレン、前方にシールドを集中させて』

『え?、わ、分かった』


唐突なネオンの言葉に、困惑するアレンだったが、すぐに言われた通りにする。


その瞬間、接近警報が鳴り響き、レーダーに高速で接近する二発の巡航ミサイルが表示される。


アレンは慌てて、舵を切り、ギリギリで一発は避けるが、二発目は、船首に当たり、艦内が揺れる。


「っ!、ダメージコントロール!」


揺れに耐えながらアレンは、手早くタッチパネルを操作し、シールドが健在であることを確認する。


『アレン!』

『大丈夫だ!』

『すぐに出る!』

『了解!』


今のは宙賊の攻撃だ、アレンの見るレーダーに、接近する二機のARMSと、中型戦闘艦が表示された。


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