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十七話 打ち上げと次の目的地

フリゲート艦二隻、ARMS一機を沈める大戦果をあげたネオンとゼナ、そしてアレン率いる傭兵団はアイベルサスコロニーに戻り、マセナリーから多額の報酬金を手に入れた。


その額は7000万レボル、傭兵歴がそれなりに長いゼナでも滅多にお目にかかれない大金であり、四人は打ち上げと腹ごしらえを兼ねて、ゼナの行きつけの店を訪れた。


前にネオンと訪れた飲食店とは一風違い、傭兵御用達の食堂といった感じのお店だった。


「アレン、ネオン、お前らはどんな酒を飲む?」

「私は辛い酒が好き」


「俺は合成ミルクで十分だよ」

「んだよ、大金を手にしためでたい日だぞ、今日飲まなくていつ飲むんだよ?」

「酒なんて何時でも飲めるだろ」


「分かってねぇな、こういう日に飲む酒が上手いんだろうが」

「はいはい」


アレンは適当にあしらい、合成ミルクのグラスを傾ける。


アレンと話しても時間の無駄だと、判断したゼナはネオンに向き直る。


「ったく、ネオンは辛い酒だったか?」

「ん」

「それならシガールか、レップスのどっちかがオススメだな」


「何がどう違うの?」

「シガールは初心者向け、レップスは上級者向けだな、」

「それならシガールにする」

「おーけー。マスター、シガールのストレートを一杯」


ゼナの注文を受け、手早くマスターの手で用意されたシガールの入ったグラスを、ネオンは手に取り、グラスを傾ける。


黄金色の酒精が、ネオンの形の良い喉を通る。


「ん、良い」

「だろ?、この店の酒は質が良いからな」


「ほら、アレン、お前の相棒は気に入ったみたいだぞ?」

「別に酒が嫌いとは言ってないだろ、ネオンも飲み過ぎないようにな」


「女に酒で負けるなんて恥ずかしいぞ?」

「うるせーな、分かったよ。飲めばいんだろ、飲めば」


だる絡みしてくるゼナの手を振り払ったアレンは、適当な酒を注文する。


「アレン、乾杯」

「乾杯」


ネオンとグラスを打ち付け合い、無言で差し出されたゼナのグラスとも、打ち付け合う。


《なぜ人間はお酒を飲むのでしょうか?》

「美味いからに決まってるだろ」


「付き合いだ」

「たまに飲むのは良い」


《なるほど、三者三様なのですね》


クモ形ロボットのカメラが、アレンのグラスに注がれる。


「エレンもボディを手に入れたら飲んでみろよ、酒はいいぞ」

《興味はあります》

「エレンに変なことを教え込むな」


「おいおい、エレンの意思を尊重してやれよ」

「ゼナは飲兵衛仲間が欲しいだけだろ」

「バレたか」


イタズラがバレた子供のように笑うゼナが飲兵衛であったこと自体は、全く意外ではなかった。


「そういや、傭兵団に名前はつけないのか?」

「名前?」


「そう、名前だ、四人もいるなら立派な傭兵団だろ?、名前があった方がマセナリーの上層部にも覚えてもらいやすくなるぜ」

「そういえば傭兵団の名前を登録する項目はあったな」


アレンは、ライセンス登録時のことを思い出す。


「ゼナ、ナイスアイデア。名前は大事、かっこいい名前がいい、皆で考えよう!」


ネオンの発言で、四人は一斉に思案の唸り声を上げる。


「覚えやすさを重視するならシンプル方がいいよな、フォース団はどうだ!」

「エキセントリックスターズ、かっこいいかも」

《アレンズというのはいかがでしょうか!》


「三人にネーミングセンスがないことは分かったよ」

「はぁ?、それならアレン()の候補を言ってみろよ」


「スターリング、意味は星とか繋がりとか、大昔の銀貨から連想して銀色とか、そんな感じだ」

「銀色ってシルヴァーナ?」


「あとはネオンだな」


アレンは店内の電灯の光が反射して、煌々と輝くネオンの銀色の髪を指す。


「ふふ、照れる」


ネオンは頬に手を当ててクネクネと小躍りする。


「ゼナ、文句は受け付けるぞ」

「ちっ」

「なぜ舌打ち?」


《ゼナ様は貶すところがないので、ムカついています》

「解説するな。スターリング、良いと思うぞ、呼びやすいし、覚えやすい」


《私も良いと思います、響きがいいですね》

「適当に思いついたやつだけどな」


「アレン、私はスターリングがいい」

「そんなに簡単に決めていいのか?、一応他に思いついたものもあるけど」


「言ってみろよ」


アレンは他に二つの候補を出すが、三人の反応は微妙なものだった。


「ダメか?」

「んーん、そんなことはない、けど…」


「スターリングほどのしっくり感はないな」

「ん、ない」

《私も同感です、アレン様もそう思ったのではないのですか?》


「確かに、スターリングが一番合ってる気がする」


皆が良いと言ってるし、もしあとで問題があったら改名すればいいことに、気付いたアレンは傭兵団の名前をスターリングに決めた。


「傭兵団スターリングか、悪くないな」


意外とネーミングセンスがあるかもしれないと思いながら、アレンはグラスを傾けた。


◆◆◆◆


打ち上げから、数日後、アレンはスターリングのメンバーをジーベックのブリッジに集めた。


「皆に相談がある」

「聞こうか」


「この前の依頼で手に入れたレボルを使って、ジーベックの改修とエレンのボディを手に入れたい」


「ただトラビッシュ宙域では、ジーベックの改修はともかく、エレンのボディを手に入れるのは難しい」


性能を妥協すればトラビッシュ宙域で、手に入れることも不可能ではないが、エレンからは最高品質のボディを要求されているので、機械ボディの製造が盛んな星系へ行くべきではないかと考えていた。


「候補は二つだ、トールストン星系、リノレス星系」


それぞれの星系データが、ブリッジのメインモニターに表示される。


「トールストン星系は、航宙軍の大規模基地があり、軍関係の企業のコロニーやステーションが集中している軍事星系で、リノレス星系は星間企業のエグロン社の本社がある貿易が盛んな星系だな」


「ジーベックの改修を考えるなら、リノレウス星系の方が良さげに見えるな」

《エグロン社は高性能のアンドロイドやガイノイドを販売している企業ですね》


「ああ、正確には系列企業だけどな、エグロン社は他にもARMSや航宙艦、光学兵器、ミサイル、銃器、何でもござれの巨大軍事企業だな」

「聞いたことがあるな、航宙軍とも取引がある星間企業だ」


「航宙軍に近づくのは止めた方がいいと思う」

「やっぱりそうだよな」


航宙軍とは距離を置くのが、アレンとネオンにとっては無難な選択肢だ。


「そうなるとリノレス星系か」

「リノレス星系は傭兵にとって活動しやすい星系なのか?」


「物資の輸送依頼や護衛依頼が主な依頼で、傭兵の需要はあるみたいだぞ」

「それなら傭兵として働けそうだな」


アレンたちは傭兵なのだから、傭兵の仕事があるかも大事だ。


そういう意味では、やはりリノレス星系が最適に思えた。


《アレン様は最初からリノレス星系に決めていたのではないですか?》

「話し合うのが大事なんだよ」


「そんで、具体的にはリノレス星系のどこに行くんだ?」

「リノレスIIIの交易コロニーだ、ここにはアンドロイド専門の系列企業の本社がある」


「エレンのボディの調達が先か」

「いつまでもエレンを、俺が片手間で作ったロボットに押し込めとくのも悪いしな」

《はい、ゼナもアレンが設計したガイノイドのボディを見たら驚きますよ》


「もう作ったのかよ」

「アレンは仕事が早い」


「大した手間じゃないからな」


暇な時間に、エレンと一緒に設計を進めていたのだが、つい先日完成したのだ。


「見せて」


ネオンにせがまれたアレンは、ガイノイドの設計データをメインモニターに表示する。


「今更だけど何でガイノイドなんだ?、機械知性に性別はないだろ」

《アレン様は男性ですので、女性型の方が適していると思いました》


「へぇー」


ゼナは設計データのガイノイドと、アレンの顔を見比べる。


「気持ち悪い視線を向けてくるな」

「いやー?、アレンの好みはこうなんだと思ってな」

「俺の好みじゃない、エレンの好みだ」


ガイノイドの顔立ちは、エレンが一から十まで整形したもので、アレンはその際にいくつかの質問に答えたくらいだ。


「アレン、どうしてセクサロイドの機能があるの?」

「エレンから欲しいって言うからつけた」


生体部品は金属部品と比べると、コストが高いのだが、エレンの要望は可能な限り受け入れると、決めていたので、了承した形だ。


「アレン、絶対に私の方が気持ちいいよ」

「何の話だ?」

「私は共和国最高の肉体の持ち主だから」

「何の話だ?」

「ガイノイドには負けない!」

「だから何の話だよ!?」


アレンは訳がわからず、声を上げるのだった。


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