十六話 フリゲート艦撃沈戦
フリゲート級の大型宙賊艦だけではなく、五隻の小型戦闘艇、そして三機のARMSがそれぞれ大型宙賊艦から出撃するのが、見えた。
『ゼナ、私は先行して大型艦を狙う。射撃に夢中になって落とされないようにね』
『そっちこそ、戦闘に夢中になって孤立するなよ』
お互いに軽口を交わし、ゼナの乗るエルカノから、離れたネオンは、シルヴァーナを飛行形態に移行させ、熱光学迷彩を起動する。
宙賊艦、傭兵艦、双方から対艦レーザー砲と対艦ミサイルが放たれる。
小型戦闘艇と傭兵の乗る小型戦闘艦が乱戦に突入する。
爆発音とレーザー光から戦闘が始まったのを感じるネオンは、戦闘宙域から適度な距離を取りつつ、一隻のフリゲート級宙賊艦に狙いを定める。
「落とす」
熱光学迷彩を解除したシルヴァーナの高威力ビームライフルの青い粒子光が、フリゲート艦のメインスラスターを貫く。
『なんだぁ!?』
突如現れたシルヴァーナの攻撃に、宙賊艦が混乱している隙をつき、格闘形態へと移行したシルヴァーナの容赦のない射撃が、対艦レーザー砲二門を立て続けに破壊する。
大きな爆発が起きるも、フリゲート艦はそう簡単には沈まない。
甲板に設置された対空レーザーバルカン砲の雨を、高機動による回避行動で、避けながら、フリゲート艦の船底に移動し、対空砲の射角外に逃げる。
迎撃するべく船底部の一部からせり出てきた対艦ビーム砲を、即座に撃ち抜いて、破壊する。
立ち止まらず、船首の方へ飛行するシルヴァーナは、六枚の機動鋼翼のうち、四枚を分離させる。
シルヴァーナに追従する四枚の機動鋼翼は実体ブレードに変形し、船首部のミサイル発射口を切り裂く。
再び複数の対空ビームバルカン砲の砲撃に襲われるが、ビームシールドで、全て防ぎつつ、その隙に四枚の機動鋼翼が切り裂き、沈黙させる。
四枚の機動鋼翼を再び収容し、トドメに艦橋をビームライフルで撃ち抜く。
巨大な爆発が起きて、フリゲート艦の艦橋が吹き飛ぶ。
『フリゲート艦大破』
「ん」
周囲を見回すと、ネオンが撃破したフリゲート艦を除いた二隻のうち一隻は複数の傭兵艦の集中砲火を浴びて航行不能になりつつあり、もう一隻は傭兵艦の攻撃を受けつつも包囲を突発しつつあった。
五隻の小型戦闘艇は既に、二隻に減り、どちらも満身創痍に見えた、それほど時間を置かず沈むだろう。
問題は三機のARMSで、対ARMS戦に慣れていない何隻かの傭兵艦が、小破しているのが見えた。
『どちらへ行きますか?』
シルヴィはフリゲート艦とARMSのどちらへ向かうのかと、聞いた。
「フリゲート艦」
『了解』
飛行形態に変形したシルヴァーナは、青い残光を引いて、加速する。
◆◆◆◆
ネオンとシルヴァーナが、フリゲート艦を狙った先行し、宙賊と傭兵の戦闘が始まった最中、ゼナの乗るエルカノは、その戦闘宙域とは距離を取っていた。
彼女の仕事はあくまで母艦ジーベックの護衛だ、ネオンに軽口こそ叩きはしたが、積極的に戦いへ介入するつもりはなかった。
そんなシルヴァーナの攻撃を受けたフリゲート艦を除いた二隻のフリゲート艦が、戦場を突っ切っていく。
「多少の損害は無視して、逃走を優先か」
納得できる選択だ、目の前の傭兵艦たちと後方の航宙軍の艦隊の総火力は、文字通り桁が違う。
ゼナは、ジーベックのブリッジに通信を飛ばす。
「ブリッジ、敵フリゲート艦が戦闘宙域を突っ切って、こちらに向かってくる、会敵する可能性は低いが念の為後退を進言する」
『了解。ゼナ、傭兵艦の中にフリゲート艦にダメージを与えそうな武装を持つ船はあるか?』
「この依頼に参加してるんだからあるにはあるだろうが、一撃でフリゲート艦の足を止めるほどのパワーはないと思う」
対艦反応ミサイルや、大口径レーザー砲があれば、シールドを貫通して、装甲に穴を開けることはできるかもしれないが、その程度の損害ではフリゲート艦を航行不能にさせることはできない。
『沈めるには時間が掛かると?』
「一隻は沈められても、もう一隻には逃げられるかもしれない」
アレンと会話している中、コックピット内に警告音が鳴る。
レーダーには接近するARMSの機影、どうやら傭兵艦を振り切った機体がいるようだ
「ちっ!、こっちに来るんじゃねえよ」
悪態を吐きながらもゼナはコックピットのスコープを展開する。
何故こっちに来るのかと思うが、真横を敵ARMSが通ったら、みすみす見逃す気はないので、敵パイロットの行動は正しい。
長距離射撃用レールガンの照準が、敵ARMSの機体を捉える。
敵ARMSは、蛇行飛行を始め、ゼナに照準を定めさせないように動く。
「ーーー」
ゼナは先程の悪態が嘘であったかのように何も言わず、ただ引き金を引く指先に全神経を集中させる。
敵ARMSの大口径ビームバズーカの射程距離が、目前に迫った瞬間、ゼナは引き金を引く。
蛇行飛行の軌道をゼナに読まれた敵ARMSのメインカメラが、木っ端微塵になり、即座に発射された二発目が、コックピットを貫き、爆散させる。
「ふぅ、オールクリア」
スコープを収納したゼナは、一度後退する。
後退する最中、視界の端で、フリゲート艦が大きな爆発を上げるのが見えた。
「やはり集中砲火を浴びれば耐えられないか」
一応残りの二機のARMSの様子を確認すると、どちらも対ARMS用のシーカーミサイルを食らったのか、機体に大きな損傷が見られた。
「落ちるのは時間の問題か」
『ゼナ、無事?』
「ついさっきアホの頭をぶち抜いたところだ」
青いバーニア光を引くシルヴァーナから通信が入り、ゼナは軽口で返す。
『見てた。残ったフリゲート艦を落とす、一緒に来る?』
「生憎とこっちにはフリゲート艦の装甲とシールドをぶち抜ける武装はないんでね、遠慮しとくよ」
『そっちはいい、対空砲が邪魔、壊して欲しい』
「それなら任せろ」
『ん、舌を噛まないでね』
「は?、うぉ!?」
接近してきたシルヴァーナが、エルカノのバックパックを掴むと、各部スラスターを噴射して、加速する。
エルカノの最高速度を凌駕するシルヴァーナの航行速度によって掛かる負荷にゼナは歯を食いしばる。
ぐんぐんとフリゲート級の大型宙賊艦が近付き、シルヴァーナとエルカノの接近に気付いたフリゲート艦はミサイルを発射する。
二人のコックピット内に接近警報とロックオン警報が鳴り響く。
減速したシルヴァーナは、エルカノを離して、飛行形態に変形し、前に出る。
ミサイルの照準を集めようとしたネオンだったが、二発のミサイルが、何かに撃ち抜かれて、爆散する。
《ゼナの狙撃です》
「やる」
チャフを温存できたと嬉しく思うネオンは、引き金を引き、高エネルギーライフルの青い光が、次弾の発射を許さず、ミサイル発射口を一撃で貫き、破壊する。
格闘形態に変形したシルヴァーナに、対艦レーザー砲が放たれるが、ネオンはビームシールドを展開し、防ぐ。
『まじか!?』
ARMSが対艦兵器を防ぐという常識外れの光景に、ゼナは思わず声を上げる。
ビームシールドを展開したままシルヴァーナは、フリゲート艦に突っ込む。
対空レーザーバルカン砲が、シルヴァーナに照準を合わせるが、長距離射撃用レールガンの弾丸が複数発叩き込まれ、破壊される。
フリゲート艦に肉薄したシルヴァーナは、逆手に抜いたビームサーベルで、対艦レーザー砲の砲塔を切り裂く。
爆発から逃れるように飛び上がったシルヴァーナは、フリゲート艦の艦橋に接近し、その上を通り際にビームサーベルで、艦橋を斬って、トドメに高威力ビームライフルの閃光を贈呈し、木っ端微塵に破壊する。
最後にメインスラスターに高威力ビームライフルのビームを数発叩き込み、シルヴァーナは離脱する。
『帰投する』
『お前の機体が同じARMSか、疑いたくなるな』
もはや呆れが混じるゼナの言葉に、ネオンは素直に答える。
『シルヴァーナは最新鋭のARMSだから』
『私の知ってる最新鋭機は単騎でフリゲート艦を沈めることはできないから』
『ん、それならアレンがおかしい』
『そうだな、あの野郎がおかしい』
アレンがおかしいという結論に達した二人は、敵ARMS、小型戦闘艇、そしてフリゲート艦が全て沈黙したのを、確認し、ジーベックへ帰投した。




